侍魂(64)エンディングメッセージ集


覇王丸

ナコルル

ガルフォード

リムルル

橘右京

牙神幻十郎

服部半蔵

風間蒼月

風間火月



柳生磐馬






覇王丸

嵐はやみ

暗雲立ち込めた世界に光がさし始める。


覇王丸は、太刀を鞘に収めると、輝く日輪を浴び、旅立つ。



彼は知っている。決して終わらぬことを。



今は昔のものがたり

我が道 極めんとする男あり。

血生臭い生きざまに凶事まとうは偶然ではなかった。



世に邪なる種は尽きまじ。

人が世にあり、世が人とある限り

そして、覇王丸が覇王丸である限り、闘いは続く。


ナコルル

カムイコタンへの帰り道。

ナコルルは、一人ぼんやりと、川辺にたたずんでいた。


久しぶりに、我が家へと帰れる嬉しさはあった。

しかし、このままコタンへと帰れば、再びアイヌの巫女としての宿命が待ち受けている。


「普通の女の子になりたい。

かわいい服を着て、いっぱいおしゃれをして、それから、あの青いニンジャさんといっしょに遊びにだって…」



けれども彼女は、"大自然の戦士"



ナコルルは川面を見つめ一人たたずんでいた。

普通の女の子のように…


その時、天に高い声が響いた。

上空を振り仰ぐ。

ママハハだ!

そのあとに続いて、地を蹴る足音。

ナコルルは背後を振り返る。

シクルゥだ!!

そしてシクルゥの背にまたがるのは…

「ねぇーさまぁー!!」

リムルルがこちらに向かって手を振っている。


ナコルルは、にっこりと微笑むと大きく手を振り返した。

早くコタンへ帰ろう。

優しき人々の待つコタンへ…。



ガルフォード

正義のアメリカン忍者

人呼んで

"蒼きイナズマ ガルフォード"


快刀乱麻を断つ活躍で、悪をなぎ倒した。


ガルフォードは、彼の瞳のように青い空を見上げると、誓う。


「ヘイ、モンスター! かかってきなよ、クラッシュ!! スラッシュ!! アタック ユー!

この世に俺がいる限り、この世にジャスティスある限り、ノープロブレムさ、フォーエヴァー」


疾風雷神。

プラズマをまとう若き勇者。


「行くぜ、パピィ! あの丘の向こうに、彼女が待ってる。そんな気がするんだ」

ガルフォードは、愛犬パピィと共に駆け出した。



リムルル

おばあちゃん、とうとうやったよ。ねえさまのかわりに森を守ったんだ。えっへん、

わたしもやるもんでしょ。

でね、村に帰ったらいっぱい、いっぱい旅のお話をしてうんと、うーんとほめてもらうんだ。

早く会いたいなぁ。

それからね、ひとつお願いがあるの。ちょっと恥ずかしいけど…。

あのね、帰ったらおばあちゃんと一緒におフトンに入りたいの。


だって、わたし、泣かなかったんだよ。痛かったし、怖かったけどガマンしたんだよ。

だから… だからね…。

…。

おばあちゃん、もうすぐリムルルはカムイコタンに帰ります。



橘右京

神速の剣が"妖魔"を一瞬にして両断した。

しかし、そのあと激しく咳き込み、膝をつく。

その時、右京は目にした。

足元に咲く一輪の花。

「…圭…殿」



「危ないですよ、ほら」

小さい男の子が母の手をつかみ、ひっぱるようにして、山奥へ分け入っていく。

「ほら待ちなさい。待ちなさいって」

「こっち、こっちにいいものがあるんだよ」


松林を抜けた先にそれはあった。

背後に渓谷をのぞむ、開かれた丘。その丘一面に、花が咲いていた。



この世のものとは思えないほど美しい究極の花。



「ね、かあさま。すごいでしょ、ねね」

優しく微笑む圭。

彼女は思い出していた。

あの人のことを…。



春風に揺れる花々は、いつまでも圭たちをやさしく見守っていた。



牙神幻十郎

"妖魔"を粉砕し、もはや幻十郎の目の前に障害はなくなった。

あとは、宿敵覇王丸を斬るだけであった。

だが、幻十郎は何故だか、牙を剥く気にはなれない。


なぜなら、あの女に出会ってしまったから。

幻十郎が、どうしても忘れることができない女。







だから幻十郎は一人さすらう。

幻十郎の肩が何かにぶつかった。岩のように硬く、山のように大きな何か。

ぎろりと睨みつける幻十郎。

そこには…

鬼がいた。真っ赤な鬼が。

幻十郎には、目もくれず闊歩する鬼。

「斬…紅郎!」



幻十郎の野獣が、牙を剥く。

「阿呆ゥが!」

凶刃が鬼を…


斬る!!



服部半蔵

黄泉を司りし者といえども理違はず


むしろ


闇に生まれし者ゆえ

闇に帰するは必定地


今は只、奈落へと沈み

己が行いを悔いて、

業の深さを知るべし

そは汝に残されし涯務となろう


さもなくば

闇に滅せよ


風間蒼月

冷たい両の瞳が、骸と化した"妖魔"を見下ろしていた。

「つまらないですね…。

こんな奴に親父殿が負けたとは…。まったく…。」

蒼月はそう呟くと、背後の闇に目を向けた。


「そうは思いませんか…火月」

「くそっ、気づいてたのか」

木の陰から火月が姿を現す。



「甘いですね、あいかわらず。

まるで親父殿のようだ」

「なぁんだとぉ!」

「そこが親父殿のようだと言うのです」

「くそぉっ! もう許さねぇ! かかってきやがれ」


だが蒼月は全くとりあわない。

それどころか、肩をすくめ火月に背を向ける。

「困りますね、火月。今回の使命は、お前を倒すことではありません」


「な、なぁんだとぉ!」

怒声をあげ、炎と化した火月が、太刀を浴びせる。


だが、その時にはもう蒼月は完全に姿を消していた。


「くそぉっ、兄貴の奴…」

残された水たまりに、がっくりと火月が膝をつく。


そんな彼を、天空に光る蒼い月が、嘲笑うように見つめていた。


風間火月

「いつでも灰にしてやるぜ!」


真紅の烈火は、全てを焼き尽くした。


仇は討った。ようやく無念は果たした。

しかし、父はもう帰ってはこない。


残るのは、大きな背中の思い出と譲り受けた熱い闘志。

そして、大事なものをなくした悲しみ。


燃える感情を忍び太刀に託し、全身、炎と化して、溢れる涙ごと…


「うぉぉぉぉ!

燃えちまえ! 燃えちまえ!! 燃えちまえ!」




色に行くあてなどなかった。

だから、夕日に映えるススキの穂をぼんやりと見ていた。

真っ赤に染まる一面の野原。

途端、胸の鼓動が痛いほど激しく鳴り出す。




赤、赤

赤、赤、赤

赤、赤、赤、赤

赤、赤、赤、赤、赤

赤、赤、赤、赤、赤、赤

赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤



燃え上がる赤!



脳裏に閃光、そして頭に絵が浮かび…はじけて…。



ようやく色は思い出した。

いつも頭に浮かぶあの真っ赤な絵。


あれは故郷の絵。

色が生まれた村が、燃え落ちる絵。

劫火に焼かれ、溶かされていくのは、父さん、母さん、そして大好きなお兄ちゃん。


そして火を放ったのは"壊帝ユガ"


ただ、色を手に入れるためだけに行われた凶事。



夕日が沈む。闇が辺りを包み始める。

色は何も感じない。

何の思いも胸には湧かない。



けれども…。

涙が一滴、ほおをつたって落ちた。


柳生磐馬

「姫さま、やりましたぞ。姫さまぁぁ!」


磐馬は笑顔のまま、泣きはじめた。


これで姫に笑顔が戻る。

心労のため、消えていた笑顔が姫に戻る。


そう思うと、磐馬は泣かずにはいられなかった。


だが、彼の泣き声は、この世のものとは思えないほど…

変だった。


「うわぁっほー!

うわっほほほー!

うわっほほほほー!」


磐馬の泣き声は、百里先の村々まで届いた。

子供らは小便を漏らし、牛馬は泡吹き倒れ、老婆は突然走り出し、死人が飛び起きたと言う。


「うわぁっほー!

うわっほほほー!

うわっほほほほー!」



磐馬は、笑顔のままで泣きわめく。


人の迷惑考えず。