乱鳳
オープニング
二人目
ナコルルの登場
六人目
九人目
ナコルルの導き(朧衆戦前)
ナコルルの導き(朧衆戦後)
エンディング
欲望と快楽が渦巻く街、『是衒街』。この街から多くの恐怖と殺意が排出されるが、その中に『小鬼』と呼ばれる孤児がいる。
『乱鳳』と『眠兎』と呼ばれる兄妹のような”二匹”である。
ろくな教育や躾など受けておらず、善悪の区別など無く、生きる為の本能と経験に従い行動する。
甘く見てかかった大人達は、ことごとく地に転がされた。
その二匹を最近見かけなくなった。特に、妹分の『眠兎』はまったく見かけなくなった。片や乱鳳の方は見かけるには、見かけるのだが……。
決まった日暮れ時に、街へ姿を現す乱鳳。やはり、今日も定刻に姿を現した。そこら辺のならず者を4〜5人締め上げ、火の見櫓(ひのみやぐら)へと登り、
周りをぐるりと見渡して、一緒に登らせたならず者に向かって
「一番声が低い奴は、ここから落とすからな。始めろ!」
大人達が一斉に声を振り絞って、
「眠兎ちゃ〜ん、出ておいで」
と何度も叫び続ける。
声の潰れた者から順に空を泳いでいく。最後まで叫び続けた一人が地面に泳ぎ着いた時、夕暮れの空へと乱鳳が消えていく。
乱鳳の眠兎探しの旅は続く。
迅衛門「しかし、この町は夜ともなると一層不気味じゃの」
乱鳳「ホロロロロロ〜ヒュルルルル〜ホロロロロ〜」
迅衛門「ん? 何の鳴き声じゃ? 上の方から聞こえるが? ……!! 何じゃ、あの奇怪な鳥は!!」
乱鳳「ア゛ァァァーッ!!」
迅衛門「どっ、どわぁぁぁ〜っ!!」
『ザッ!!』
迅衛門「ヒィーッ!! 出たっ!! 妖怪じゃあっ!!」
乱鳳「オイ!! タコ」
迅衛門「へっ……タコ?! なっなんじゃ、ワッパか!! 人を驚かすのもたいがいにせい!!」
乱鳳「ナンデ、タコがナマコ乗せてんだよ?」
迅衛門「何を言っとるワッパ? タコ? ナマコ?」
乱鳳「オマエの事だよ」
迅衛門「ぬっ、ぬなっ!! ばばばっ、バカにするな、小僧っ!!」
乱鳳「うるさいヤツだな、タコのくせに。いいから、早く金出せよな」
迅衛門「何ちゅうガキじゃ!! オイ、ワッパ!! お主の親はどこじゃ。ワシが喝を入れてやる」
乱鳳「めんど臭いヤツだな。オレの親は、この街さ」
ナコルル「お願い……。助けて、暗黒の闇が……。黒い力が……。破壊が……来るの……。
どうか……。あなたの……力で……。邪悪な力を……止めて……下さい。覇業三刃衆を……」
伊賀忍者「お主らの企み、我が同胞の手により……必ず潰えようぞ……」
朧衆「お黙り!!」
『シュッ!!』
伊賀忍者「グア〜ッ!!」
朧衆「とうとう幕府が動き出したか。この事、早く朧様に知らせねば」
乱鳳「ひでえ事するぜ、まったく」
朧衆「何やつ!!」
乱鳳「白目むいて死んでるぜ、そいつ」
朧衆「フン!! 何だと思えば、ワッパか」
乱鳳「最近街がザワついてんだ、オマエらのせいで」
朧衆「そうか、オマエ小鬼とかいうガキだな。小賢しい……始末してくれるわ」
乱鳳「あんまりはしゃぐなよな、オレの街で」
乱鳳「ナァ相変わらず、この花畑、飛んでないんだな、蝶が?」
無限示「オオッ小さき鬼の子よ。今日は一人か?」
乱鳳「ああ、眠兎がいないんだよ、ここんとこ」
無限示「オマエには、あの白き小鳥は無用だ。あれは、オマエの純粋なる闇を曇らす存在だ」
乱鳳「ア゛アァァッ!!」
無限示「お〜美しい……その闇を照らす純粋で崇高な怒り。そうだ怒れ、もっと深く、もっと速く。
生まれたまま死をも超越せよ」
乱鳳「オマエさあ、何か恐いよ!!」
無限示「オマエは我と同体だ。希望という偽りの光が届かぬ所へ……。深く、もっと深く……。
喜びという猥雑な音が届かぬ所へ……。速く、もっと速く……。
黒き者よ、オマエはこの世に生まれた時より、孤独と絶望という翼を持っている。飛翔せよ、我と共に飛べ!!」
乱鳳「もう行くよ。眠兎が待ってるんだ」
無限示「キィーエーッ!! 闇よ救い給え、この小さき魂を!! 殺せ黒き者よ、忌まわしき白い小鳥に死を与えよ!!
目指せ、オマエが目指す領域は、神の知る場所!!」
乱鳳「ア゛ァァッ!! 眠兎を傷つけるヤツは、オレが殺す!!」
無限示「オオオオー。それは神の領域だ」
ナコルル「私の話を聞いて。私の名はナコルル。光の巫女。あなたにお願いがあるの。
そんな顔しないで。大事なことなんです。
今、大変な事が起こっているの。邪悪な意志を引き継ぐ覇業三刃衆によって……。
20年前……。邪悪な意志の元となった人物が現れたの。名前は朧。
その人物は、今の世の中を混乱させて、強い者だけが生き残る国を創ろうとしているわ。
その時に朧は、邪魔になる私たち光の巫女を恐れて封印したの。お願い。私はもうこれ以上うごけないから。
でも、もう一人の光の巫女。彼女ならきっとあなたの助けになるはずよ。彼女はこの先で永い眠りについているわ。
お願い、あの娘を助けてあげて。名前はリムルル。私の妹なの」
朧衆「光の巫女を助けに来ただと。己ごときの力量で我々を倒しに来たとは笑止!返り討ちにしてくれるわ。覚悟!」
ナコルル「ありがとう。もうすぐこのリムルルも目を覚ますわ。貴方が傷つき、先の道へ進めなくなった時、リムルルがあなたの助けになると思うの。
ありがとう……。どうか……邪悪な意志を……滅ぼして……」
毬男「眠兎ちゃ〜ん、昼ご飯だよ〜っ!! ……あれ? もしかしてまた、抜け出してるのかなぁ?」
(天幻城内の一室(おそらく毬男の自室)、毬男の前に眠兎が現れる)
眠兎「反ぷく転ぷく斬り〜っ!!」
毬男「ギャーァーッ……ってこぼれちゃうじゃないか!」
眠兎「おうっ!! まろい、見て見よこの技。ケケケッまああれだなっ、この必殺技ってば宇宙最強だよなっ!!」
毬男「ハイハイ、あのね眠兎ちゃん。いくら囚われの身だからって、少しは勉強ぐらいしとかないと、大人になったら、後悔するよ」
眠兎「おうっ、ミントのボインは、でっかくてプニプニするぞっ!! だから、大丈夫なのね」
毬男「もう……そんな事ばっかり……」
(窓の外を見やる眠兎、手にしたお盆を机に置いている毬男)
毬男「……ん? どうしたの、眠兎ちゃん?」
眠兎「…………。……あのね、ミント今、明るい気持ちなの……」
毬男「……え?」
眠兎「うしししっ! 来た! 来たぞ、まりお!!」
毬男「来たって何が?」
眠兎「ミントにはランポーが必要なの。でもって、ランポーにはミントがおらんといかんのね。分かる?」
毬男「キミを理解できるとは、思ってないよ……」
乱鳳「ホロロロローッ、ヒュルルルルー。ホロロロロッ!!」
毬男「何!! 何の声?!」
「ア゛ァ゛ァ゛ーーッ!!」
(窓の手すりに飛び乗ってくる乱鳳。敬礼する眠兎)
眠兎「チイーーース」
乱鳳「眠兎さ……ずいぶん探したぞ」
毬男「あ、あのお〜失礼ですが……どちら様で?」
(背を向ける乱鳳、ニヤリとする眠兎)
乱鳳「……ん、なんだよ、オマエ?」
眠兎「まりおだなっ、まああれだ、極悪非道な殺人忍者マンだよなっ!!」
(風呼霊(かぜこだま。武器)を手に部屋に踏み入る乱鳳と必死に弁解する毬男)
乱鳳「ア゛ア゛ッ!! オマエが眠兎を隠してたのかぁ!!」
毬男「ちっ違いますよ〜。ミ・ミ・眠兎ちゃんがこの城で迷子になって、捕まってしまって、だけどトモダチの僕は遊び相手にされたり、
馬とか敵とかになって……えと、だけどそれから……。それから、妹の芽衣のトモダチでもあって……。えっと……」
乱鳳「なに言ってんだか分かんないよ……」
(二人を背にすねた顔の眠兎)
眠兎「ランポーってば、遅すぎだよなっ!! ミントってば少し悲しい気持ちだったのね」
乱鳳「チッ!! 勝手な事ばかり言ってら。なんで帰ってこなかったんだよ?」
眠兎「何故に!! それは、囚われの身だからなっ!!」
乱鳳「抜け出してんだろ、まったく」
眠兎「だよなっ!!」
乱鳳「さぁ行こう。オジイが来てるぜ」
眠兎「おうっ!! じゃあなっ!! まりお。ダチトモのトモダチだよな!! メイたんもトモダチだかんなっ!!」
毬男「行っちゃうのかい?」
(窓から飛び出す乱鳳と眠兎、見送る毬男)
眠兎「はっしん!! ホヘーーッと」
乱鳳「ホロロロローーッ……」
毬男「……やっと静かになったよ……。だけど、あの二人……なんで飛べるの?」