雲飛ED

例によって細部が適当かと


++++++++++劉雲飛・天下一剣客伝公式ストーリー++++++


永い夢を見ていた。そんな気がした。

醒めてみれば、夥しい邪気が何処からかこの世界に侵入している。

良く心得ているこの邪気は、明らかに魔界のそれ。

甘美な夢を振り払い、目覚めるには充分すぎる事態だった。

「邪気、未だ潰えず…か」

果たして、世界の何処に綻びが生じたのか。魔界への門は何処に開いたのか。

それを封じるのが雲飛の使命であり、贖罪であり、すべてである。

そのために自らを捨てることなどは至極当然のこと。

「妻よ、すまぬ…。」

小さく別離の言葉を発し、雲飛は空へ飛び立つ。


永い夢を見ていた。決して叶わぬ、決して許されぬ、永い夢。

桃源にその身を置き、妻と共に悠久の時を生きる。  そんな夢を見ていた。

いつまでも、お帰りを待ち続けております・・・・・・と、 妻の声が耳朶に届いた。

そんな気がした。


公式サイトより抜粋
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劉雲飛CPU戦


CPU登場キャラ:アンドリュー、機巧おちゃ麻呂、いろは(どれか1キャラ登場しない場合あり)

徳川慶寅、羅刹丸、妖怪腐れ外道、タムタム、風間蒼月、王虎、花諷院和狆

中ボス:炎邪、水邪

正式なテキストはこちら

開始台詞

「邪気、未だ潰えず…か。妻よ、すまぬ。我が身を犠牲にしてでもワシは現世に降り立たねばならん!」


CPUキャラ・対雲飛専用台詞

王虎「さぞ、名のある武人とお見受けした!我が名は王虎!
御身の名と力、お伺いしよう!」

和狆「おヌシ、一体何者じゃ…? これほど大きな気の持ち主、初めてじゃて…。」

おちゃ麻呂「不思議でおちゃるな…。そちからは、良きモノと悪しきモノ、
双方感じるでおちゃる。はて?」




CPU四戦目 対炎邪

炎邪「ガガボッ! ゲェェ! フゥォォォォ・・・・・・ドゥア!」

雲飛「久しいな。ワシを封じた後魂のみを分離させて生き長らえておるのか。
邪な穢れた存在になりおって・・・・・・。」

炎邪「ヴァッハー! ドングラボッガー!」

雲飛「もはや貴様をかつての弟子とは思わぬ。
だが、貴様を屠るは師としての最後の役割であり・・・・・・宿命よ!」


炎邪戦後

雲飛「貴様にワシを超えることはできん。
苦しませぬのがせめてもの情けか・・・・・・。許しは乞わぬ。逝け。」

炎邪「ォォォォォォ・・・・・・。グルジオ・・・・・・。」

雲飛「この気・・・・・・そうか、あやつも同じくこの時代におるか。
これも、ワシの業よな・・・・・・。」



決勝戦(CPU6戦目) 駿府城 城内南広場 御前試合 対水邪

水邪「ほう・・・・・・。貴様、懐かしい顔だな。
我らに封じられた岩の中は快適だったか?
あえて言うが・・・・・・師よ、久しいな。」

雲飛「本来ならば捨て置く所ではあるが、悠久の時を越え老いたりといえど
貴様らの師であったは事実。
これ以上、罪過を重ねるようならば・・・・・・。」

水邪「ふむ・・・・・・。師よ、老いは隠せぬな。もはや我の相手は務まらぬぞ?
老兵は去れ。死にたくなければ、神である我の御前から消えよ!」

雲飛「思い上がるでない、小僧! 貴様に技を授けたのは誰か?
ワシに通じると思うたか!見せてやろう、武侠の真髄を!」


水邪戦後

雲飛「道を違えた貴様には、真の武侠の剣は見切れまい。
案ずるな、西刹では既に貴様の親友が待っておるぞ。」

水邪「何だと!? 貴様、炎邪を!?
愚か者が、我らはこの世界の破壊と創造を担う神だぞ!
それを・・・・・・」

雲飛「もう、何も言うな。貴様らのことは忘れん。逝け。
・・・・・・ふむ、何故かな・・・・・・。心が痛むな・・・・・・。」

雲飛「−−−−−−−−ほう、邪気が満ちたな。」


ED

御前試合会場に一人立つ雲飛。

「終わったな・・・・・・いや、まだ何も終わってはおらぬ。」

魔界の門は何故これほど現世と近くなったのか、やはり自分が闇キ皇に憑かれた千年前からか、

独白して雲飛は真上に飛び立つ。やって来たのは魔界(魔我旺ステージ)。

ここで魔界の門を自らを盾に封じることを決意。

妻を思い、お前と暮らした僅かな時の幸せな思い出が慰めとなるだろう、と言った内容のことを言い、

「さらばだ」と宣言する。

そこに、お待ちください、と現れる妻の魂。(零EDの羽衣らしきものをまとった姿)

雲飛と共にありたいと告げる。一人でお帰りを待ち続けるのは辛く思います、と。

魔界と現世の境目にあってはもはや生も死もない、

ワシを捨て来世に生きよと妻に告げる雲飛。

あなたの居ない来世は虚しいだけです、私は永遠にあなたの妻ですと言ったことを彼女は言う。

安らいだ表情になった雲飛、”ただ一人愛した者”である妻に告げる。

「共に、逝こうか。」


その後。

妻をその腕に抱き、魔界と現世の間にあって魔界の門を封じ続ける雲飛。

果たして魔界の門が開いたのは雲飛のためなのであろうか? 一端を担ったことは間違いないが・・・・・・。

生も死もなく、永久に魔界の門を封じ続ける雲飛と妻。

目覚めるあてはない。



劉雲飛 勝利台詞条件は推測混じり

正式なテキストはこちら


「長年の経験により培った叡智。それが我が最大の武器よ。老いは決して恥ではない。貴様では及ぶまいよ。」
(斬り勝利体力大)

「剣に生きる者は剣に死す運命。抗い、生き延びてこそ強さは身に付こう。」
(斬り勝利体力中、小?)

「恐怖心に捕らわれた貴様に勝機は見出せまい。弱き心、それが命取りとなる。」
(必殺技勝利体力中、小?)

「怒りは容易に人を狂わせる。怒りに心を曇らせた貴様には度し難き隙があった。」
(必殺技勝利体力大)

「仁愛を宿した心に、罪は許せよう。哀憐を宿した目に、咎は映るまい。
貴様の心と目に、ワシはどう見えておるのか・・・・・・。」(蹴り・投げ勝利体力大)

「力を出し惜しみする余裕があったとは思えぬな。そんなことでは貴様に勝機はなかろうよ。」
(蹴り・投げ勝利体力中?)

「戦う意思も勝つ意思もない者を打ち倒すことの、何と虚しく何と腹立たしいことか・・・・・・。」
(武器飛ばし(秘奥義含む?)勝利体力大)

「人は欲深いもの。故に、謙譲の徳を積まねばならぬ。
分不相応な余計な望みを背負い込まぬようにな。」(秘奥義勝利・もしくは超必殺技体力小?)



++考察と感想(モドキ)++

公式におけるオープニングストーリーでは、雲飛は妻と桃源郷に過ごす”永い夢”より目覚めて

魔界の門を閉じるために旅立ちますが、具体的にどこでどのように(零のラストと関連して)

眠りについていたのかは全く言及されていません。

ポリサムでのナコルルのように、大自然の大いなる息吹に守られていた、

とでも解釈しておけばいいのでしょうか?

それはさておき今回の天下一剣客伝(以下剣サム)における雲飛の物語は、

彼のもう一つの贖罪と後始末が軸となっています。

具体的には、今回(機巧おちゃ麻呂の設定において明かされた)、

”雲飛の弟子八名のうち二人が、闇キ皇を封じた後魔界の力に魅入られ、炎邪・水邪という妖魔になった”

ことを指し、雲飛のCPU戦では中ボスはそれぞれ炎邪と水邪です。

サムライスピリッツ零(以下零)においては、話の一つの軸を構成していた魔界の妖魔・闇キ皇に関連する

雲飛(昔の憑代)・炎邪水邪(闇キ皇の持つ”人魔一体”の秘術を狙う)の関係性は

全く語られていませんでしたが、この三者が闇キ皇が中国に現れた千年前から

存在し続けているものたちであることは明らかになっていましたので、

剣サムにおける三者の関係性が今回追加されたものか、

それとも元からアイデアがあったものかは微妙なところかもしれません。

なお、炎邪水邪は元人間であることは明らかになりましたが、

雲飛の弟子時代に持っていた筈の人としての氏名は明らかになっておらず、

ゲーム中シナリオでも言及されることはありません。これは複雑になることを避ける処置かもしれませんが、

少々残念なようにも思います。細部の設定にも凝っているサムスピシリーズだけに・・・・・・。

と思いましたが、名前も明らかになっていないサブキャラはそれなりにいましたね。

斬紅郎無双剣における右京の師(謎本と零では黒河内左近でしたが)、

ポリサムにおける火月の養父(名前もエピソードも存在しないため、物凄く影が薄い)など。

それぞれ見ていきますと、まずは四戦目の炎邪。

まともに人語を発しない彼のキャラクターですので、ここでも何を言っているのかは不明ですが

最初の台詞は彼なりに驚いているんじゃないかと思います。

「ゲェー師匠!? マジかよ!?」みたいな感じで。

ガガボとかゲェとか、なんかゆでたまごの語彙みたいですが(笑)

その後の「ヴァッハー!ドングラボッガー!」は、「俺はもう師匠を越えたぜぇ!」と

いったことを言っているのではないかと思ったり。

雲飛に敗れた後の台詞で、剣では削除されてしまったグルジオが登場しているのが貴重です。

(訂正:テキストではおちゃ麻呂に敗れた時も出てきますね)

この時雲飛は、おそらく炎邪に残っていたと思われるもう一人の弟子・・・・・・水邪の気を感じ取っています。

全体的に雲飛に関しては、千年振りに望ましくない形で弟子に再会したわりに

台詞などはかなりあっさりしているというか、さほど衝撃を受けていない印象があります。

千年の封印の間に、大抵の事には動じなくなったのでしょうか。

・・・・・・それにしても、炎邪は千年前からああだったんでしょうかね・・・・・・。


”城内御前試合”である決勝の相手は水邪。

ここでの雲飛と水邪の掛け合いは、私にとって非常に印象深いです。

水邪はかつての師を目の前にして「懐かしい顔だ」「敢えて言うが久しいな」と、純粋にそう言っています。

同時に嫌味と取れる台詞も言っていますが。

この後に続く台詞も、師の老いた姿を嘲り「我の前から消えよ」となってはいますが

(昔の中国、しかも師弟関係の厳しい武侠にあっては、本来ならこれだけでそれこそ万死に値するのでしょうが)

水邪のキャラクターを考えると、相当に特異な態度ではないでしょうか?

自らを神と思い、あらゆる人間に対し屈服と崇拝を要求、愚民・愚物、俗物と罵り見下し、

意に添わなければすぐさま死をもって応じる、それから考えると雲飛に対しても

「貴様はもう用済みだ、死んでしまえ」といった台詞が出てもおかしくはありません。

しかし実際に言った台詞は「老兵は去れ」「死にたくなければ我の前から消えよ」。

もう老いた師は自分(と炎邪)にとって脅威ではない、殺すほどのこともないという判断なのかもしれませんが

別な見方をすれば見逃そうとした、ともとれなくはないでしょうか。

つまり、水邪にとってかつての師雲飛は見下し排除するだけの存在ではなかった。

彼なりにかつて師弟として培った絆を尊重した故に、とった態度ではなかったでしょうか。

雲飛に敗れた後、炎邪を倒したと言う師に食って掛かる台詞といい、

ここの水邪には俗物で小物なだけでないもう一つの「人であった頃の姿」が見えるように思います。

そして、魔物となった弟子たち二人に師として裁きを下しながらも「何故かな・・・・・・心が痛むな・・・・・・。」

と呟く雲飛が切ないです。


エンディングで雲飛は、まだなお現世に近付きつつある魔界の門を自らを盾に封じ続けることを決意します。

その原因を彼は、やはり自分が闇キ皇に憑かれた事件ではないかとしていますが、

その後のストーリーでは”一端を担ったのは確かだが、果たして原因はそれだけだったのだろうか”

といった一文が見受けられます。

すなわち、雲飛が闇キ皇に憑かれることが例えなかったとしても、

どこかで魔界の門を開く人間が出てきたかも知れず、勿論それは雲飛の責任にはなりません。

しかし雲飛はどこまでも自らの責務を果たそうとし、彼岸で待つ妻に別れを告げました。

が、彼の妻・・・・・・炎邪水邪の人時代同様名前も持たず、雲飛の愛した妻であり、

彼に殺された以外何もわからない女性・・・・・・は

雲飛の前に現れ自らの意志を夫に告げます。いつまでも共にありたいと。

しかし魔界の門を封じるため現世と魔界の間に留まることは、

生まれ生きて死ぬ自然の営みから外れること。

「唯一人愛した者」をそんな目に合わせたくない雲飛は、自分を捨てて転生し、

新たな生を生きろと申し渡しますが愛する者を思いやったが故の言葉でも、

それは妻当人にとってはまたも愛する夫と離れる不幸でしかありませんでした。

雲飛は妻の気持ちを汲み、「共に逝こうか」と告げます。


雲飛夫妻は生きることも死ぬこともなく、魔界と現世の間で魔界の門を封じ続けます。

これは幸せなのでしょうか。

最愛の人と永遠の時を過ごす、それ自体は理想的な幸せでしょう。

ただそこは憂いのない桃源郷ではなく、人界を脅かそうとする魔界との境目。

雲飛は最愛の人と、そして自らの罪と永遠にそこに留まっているのです。

劉雲飛というキャラクターが好きな者として、彼には生きて欲しかった、

少なくとも何らかの幸せを得て欲しかったと

願った身にはなかなかに辛い結末でした。

もう一つのエンディング、王虎のエンディングに出演した雲飛は

もう一度人として生きることを決意しそれを成し遂げたのですからなおさらでしたが。

ただ、どこまでも己の為すべき事を貫き通した姿勢は見事だったと、そう思います。