アスラ斬魔伝インタビュー


SNK商品開発本部第二開発部・河野浩行開発部長インタビュー
【芸文社発行・ネオジオフリーク1998年8月号6〜7ページより抜粋】


つめこみすぎた前作を整理し、シンプルに

―『アスラ斬魔伝』の基本コンセプトについてお願いします。


「まず前作の『侍魂』についてなんですが、反省点としてはハード的に初めてトライするものだったため、

いろいろなものをつめこみすぎてしまったことが挙げられます。

まぁ、よくいえば盛りだくさんってことなんですが、逆にいえば全体的に散漫な印象になってしまったかな、と。

そのため今回はそれらをいったん整理し、本来何が「サムライ」でおもしろいのか、ということを考え、それをもとに再構成してみました。

また、この『サムライ』シリーズは、もともと2Dシリーズでずっとやってきたものが3Dになった経緯があるため、

3D格闘ゲームとしての基本ルールと、シリーズ通しての『サムライ』らしさの間でどうバランスをとるか、ということにも注意しました。

もちろん前作の評価をきちんと受け止めたうえで、改良点を考慮したのはいうまでもありません」




世界観に合ったキャラクターを!


―全体的なストーリーについてお願いします。


「今回は復活した壊帝ユガを中心に、新キャラをからめた話になります。

そこで前回と合わせてきっちりとした結末をあたえようと、このような形になりました」


―新キャラについてお願いします。


サブタイトルにも名前が出ているアスラについては、主人公というわけではないんですけど、

「このゲームのキーパーソンとして、覇王丸と対比させた存在に設定しました。ただ、ストーリー的に覇王丸とからむ、ということではないんですが」


―キーパーソンという意味では、前作の色と同じような感じでしょうか?

「そうですね。ただストーリーを見ていただければ分かるんですが、ユガとのからみや成り立ち部分で、色に比べ、より分かりやすく、

より強い形でユガとの対峙関係を描いています。」


―もう1人の新キャラ、八角泰山についてはどうでしょう?


「八角は、ストーリー的にはやはり対ユガでからむんですけど、ゲーム的には、イロモノというわけではないけれど少し変わった、

他のキャラとは一線を画したものを目指しました。そのキャラ単独でインパクトが与えられるような感じですね」


―旧キャラは出す予定はなかったのですか?


「ごくごく初期の段階ではあったんですけどね、十兵衛とか。ただ、今回は完全に世界観が前作と継続していますので、

その世界観にピタリとあったキャラを出したいと思ったんです。そうなると旧キャラではなかなか難しく、新キャラを作ることになりました。

これはタイトルに限らない話なんですけど、やはり旧キャラの復活っていうのは、作り手にとっては難しい作業ですね。

続編とはいえ、作り手側としては新作を出す時に新たなイメージを作り上げるわけですよ。そうすると、そのイメージに合わないキャラは

登場が難しくなってきます。

今回のKOF(KOF'98※管理人)のように、復活がテーマになっているものなら話はまた別ですが」




修羅と羅刹で通常技も変わる!?


―今回、修羅と羅刹の違いが今までに比べてより一層際立ちましたね。


「そうですね。ビジュアル的には一気に変えました。

これは3Dの利点をいかした変更ですね。3Dものはテクスチャー(注)をはりかえることによって、まったく違うビジュアルに変える

ことができますから。2Dだと、このへんの作業は一から起こさなければならないので大変なんです。

またテクスチャーをはりかえるだけでなく、修羅と羅刹でモーション自体も変えているキャラもいます」


―ビジュアル面の変更は、やはり前作のショートカット羅刹ナコルルが好評だったからですか?


「というよりも、これまでもやりたかったんですよね。ただ今回はより踏みこむことができた、というのがより正確です」


―技関係はどうですか? まさか、修羅と羅刹で通常技まで変わるキャラがいたりとか…。


「そうですね、もしかしたら、通常技もふくめて変更になるキャラがいるかもしれません」


―そこまでくると、修羅と羅刹ってほとんど別人、って感じもしてきますが、いちおう同一キャラが基本なんですよね?


「磐馬など、たまに別人のキャラもいますけどね。アスラなどは、ストーリー的にも修羅と羅刹の違いが関わってくるかもしれませんね」




3Dならではのシステムを



―システム面に関してですが、末端部分に受けたダメージが回復する、というのが少し意外だったんですが。


「これは、まず3Dならではのシステムを作ろうという狙いが最初にありまして、そこで何ができるかを考えた結果なんです。

3Dなら当たり判定が部位ごとに明確にできるので、それを活かそうと。

2Dだとやはり、当たり判定はどうしても全体のシルエットでとるため、部位ごとの当たり判定は不明確になってしまいますからね。

相手を斬るにしても、どこを斬るか。守る方も自分はどこを守ってと、なるべく真剣勝負に近い感じで、戦略にかかってくるというのを

強調したかったんですよね。

だからダメージが回復するというよりは、一番重要な胴体部分と、他の部分との差別化を表現したものと思ってください」


―怒り爆発がいつでもできるように変更されましたが…。


「もともと怒り爆発というのは、一発逆転を狙えるシステムとして作ったものだったんです。が、実際にプレイしているのを見ると、

あまり本来の役割を果していないように思えたんですね。

そこで、もう少し本来の目的に沿うようにしたいと思いまして、いつでも怒り爆発ができるように変更しました。

もちろん怒りMAXの時に怒り爆発をすれば、そうでない時に比べ、かなり攻撃力がアップします。

だから怒りゲージは少ないけどここで爆発とか、もう少しためてMAXにしてからとか、”いつ爆発させるのか?”というのが、

今回は戦略上重要になってくるはずです」


―その他、細かいところでも色々とシステムが変更されていますね。


「基本的には最初にいったように、たくさんの駆け引きでどれを優先すればいいか分からなくなるのを避けるための変更です。

なるべく駆け引きをシンプルにして、緊張感を第一にしようと。

この緊張感第一っていうのは、いつもサムライを作ってる時に念頭にあることなんですけど」




出荷台数も前回よりアップ!


―現在の開発状況についてお願いします。


「そうですね、夏休み中にはなんとか…、と思ってるんですが」


―パーセンテージでいうとどれくらいですか?

「60〜70%くらい、といったところでしょうか。キャラクター関係もまだ、試行錯誤していますし」


―前回、ファンの間で「プレイしたいけど近くのゲームセンターにない」という意見が結構見られましたが…。今回そのへんは改善されますよね?


「そうですね、もう少し数的にはアップしないといけませんね(苦笑)。

1台でも多く『サムライ』を設置していくためにも、より魅力的なものに仕上げたいと思っています。お楽しみに!」




(注)テクスチャー:模様のこと。すべてドットで描かれる2Dと異なり、3Dポリゴンは簡単にいうなら

骨組みにテクスチャーをはりつける2重構造となっている。

2Dで描かれたキャラが服まで一体化された人形だとすれば、

3Dで描かれたキャラは裸の人形が着ぐるみをかぶっているようなもの。

基本的な骨格は変えようがないが、外見だけならテクスチャーをはりかえることで、

まったくの別キャラにできるのだ。


   


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