国のため義のため、魔王となった真のますらお
魔界を統べし我旺
〜物語〜
そこは人の世において”魔界”と呼ばれた場所。
闇黒、慟哭、悲鳴、悔恨、怨念、嫉妬、叫喚、嫉妬、憎悪……
負に傾倒したあらゆるモノを内包した魔界の瘴気に常人が触れ様ものならば、
身体はおろか、魂までも蝕まれ、その存在が危くなる。(※1)
魔界の瘴気にその総身を晒しながらも、漢は超然として突き進む。
瘴気などまるで意に介さぬと云わんばかりに、遥かに上回る自らの覇気で瘴気を退ける。
魔界へ身を投じたところで、その剛勇に翳りは微塵も無し。(※2)
現世において鬼神と謳われた漢は、魔界においてはなおも覇気が漲る鬼神だった。
生を受けてより古今を通じ、為すべき事はただひとつ、眼前の敵を屠るのみ――――――――。
穂先の刺突が 気を穿つ。★
槍刃の斬閃が毒気を裂く。
長柄の屠撃が邪気を砕く。
その魔物は我旺を遥かに凌ぐ巨躯を生かし、(※3)
振り払う鬼十字・四法印(※4)を強引に片手で掴み上げるが―――――――
へし折ることもできず、我旺の手から奪い去ることも叶わず(※5)
「――――――――灰となれ!」
逆に、我旺の裂帛の気合と共に瘴気を斬り裂く鬼十字・四法印が発する、
魔界に住まうすべての怨敵を灰塵と化す火焔の螺旋に巻きこまれた。
業火の爆ぜる音に断末魔が重なり、魔物は死屍と化す。
永遠に続くと錯覚するかの如き死闘は、(※6)ついに我旺の勝利で終結した。
魔界のあらゆる敵を討滅した。
穢き魔物の返り血にこの身を染め上げたのは何の為に。
額の十字傷より(※7)零れ落ちる艶やかな紅い血は誰が為に。
築き上げた屍山を声、渡る血河の大願は、己の死地と望み焦がれた三途の果てか。
兇國我旺、今、ここに魔界を統べる。
次は、今だ慟哭の鳴り止まぬ國の為、現世を統べる。
そして、最後に統べるはただひとつ―――――――
「天をこの手に―――――――――!」
(※1)断言できないが、おそらくは本来あるべき輪廻転生の理からは外れてしまうだろう。
(※2)闇キ皇を封じる為に、命を賭して魔界に身を投じたが、幸運にも一命を取り留めた。
以後、現世を脅かす魔界の勢力を相手に孤軍奮闘している。
(※3)名を知らぬ魔物だが、明らかに他の魔物とは格が違うことは判る。
我旺は闇キ皇と同等かそれ以上の魔物と評し、魔界の支配階級に属すると判断した。
(※4)かつて、現世での慶寅との死合で片方の刃を失ったため、厳密には十字槍ではない。
(※5)我旺の意思を無視して、鬼十字・四法印が我旺の手から離れることはない。
我旺と四法印は正しく人槍一体の境地に辿り着いたのであろうか。
槍が意志を持つなど、真に非科学的なことではあるが……。
(※6)魔界では時間の流れが現世とは違うらしい。
この戦いが一日続いたのか、一ヶ月、はたまた一年続いたのか、我旺本人にもわからない。
(※7)かつて、現世に降りた闇キ皇を打ち砕いた際に追った誇り高き傷痕。
★アルカディアでも一字抜けてます。おそらく「瘴気」じゃないでしょうか。(管理人)