皆様は、「やおい」という言葉をご存知でしょうか。


えー、簡単に申しますと、コミックなりTV番組なり、

ジャンルはさまざまですがそれらの既成の作品から二人の男性キャラクターを選び出し、

(親友同士だったり、ライバルもしくは敵同士だったりと、これまたキャラ環境によって違

いますが)彼らを熱愛しあい求め合う恋人たちとして、漫画なり小説なりで描き出す「二

次創作」のことを指します。今更説明不要な気もしますし、人によってさまざまな解釈も存

在するでしょうが、ここではそう大雑把に定義してかかりたいと思います。


おたく文化を享受している日本人女性の間で(筆者もその一人ですけれど)絶大な人気

を誇る、というよりも、もはや完全に根を下ろしていると言っても過言ではない、「やおい」

というスタイル。

その源泉はなんと、人類最古の文明の一つであり、その洗練されたスタイルが既に古代ギリシ

ャ時代から近代ヨーロッパ・そして現代社会に至るまで人々を魅了してやまない

「古代エジプト文明」を支えた要素の一つ・エジプト神話にあったのです!


(ここで既に不愉快になられた方、怒り心頭に達した方はお戻りになることをお勧めします。)

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エジプト神話は、具体的な物語として書きとめられているものがほとんどありませんが、

その数少ない例外が「オシリスとイシス」
及び「ホルスとセトの争い」でしょう。


文化英雄でありエジプトを統一した王であるオシリスは、妹イシスを妻に娶り、

これからも幸せに暮らせる筈でした。その矢先、オシリスは彼を前から妬んでいた

気性の激しい弟・セトの
陰謀のために殺されてしまいます。

妻イシスは、ナイル河に流された夫の遺骸を探し当てますが、


セトは今度は、オシリスの遺骸を14に分解し放棄します。イシスは根気よく夫の遺骸を探しあて、

彼女が得意としていた魔術の力で夫を一時的に復活させ、彼の息子ホルスを宿します。

これ以後、復活したオシリスは冥界の神となりました。

一方イシスは、我が子ホルスに地上(エジプト)の玉座を継がせようとしますが、

オシリスの殺害者である弟セトは、自分の王位継承の優位を主張します。

最高神である(ということになっている)太陽神のラーがセトの味方をしたため、


神々の陣営は真っ二つに別れ、以後永きに渡ってホルスとセトは戦いを繰り広げることとなります。


死の別離の悲惨、嘆きの彷徨。執拗な悪巧み。我が子を守り抜く母の強さ。父の仇を討ち、

己が正当なる王位継承権を手にするため闘う若者。二つの陣営に分かれて戦われる、権力闘争。

人類の歴史で幾度となく繰り返され、そしてこれからも繰り返されるであろう物語の要素の

全てが、先述の神話には備わっています。

これほどのドラマティックな舞台立てであれば、「やおい」スタイルが混入されるのは

もはや、自然の摂理というもの。(言わないって)

ではいよいよ、問題のシーンを見てみましょう!


ホルスとセトの争いは熾烈を極めます。

しかしながら神々の提案によって、二人に和解の相談が持ちかけられます。

二人は承知し、セトはホルスを招いて宴会を開きます。

彼らは親愛の証として、その晩は隣り合って眠りました。が、その翌日。

神々の集う法廷に、ホルスを伴い出向いたセトは、声高らかに宣言します。

「エジプトの王冠を私にお授けください。何故ならあなた方の前に立っている者(ホルス)は

男ではないからです。彼は女です。昨晩彼は私のために奴隷女の役をしました


・・・・・・ようするにセトは、ホルスを貶めるため、自分とホルスは男色関係にあり、

オレはタチ(凸攻め)でこいつはネコ(凹受け)だと主張したわけですな。

これを聞いた神々はホルスを侮蔑します。

この場面で私は、中世北欧のバイキング時代、勇猛なるバイキングたちの間では

「○モ野郎が!」という悪口が最高の侮蔑であった、というエピソードを思い出しました。

しかし。誰もそう言い出したセト本人に「○モ野郎!」という侮蔑は向けんのか?(小さな疑問)

攻めだったら男らしい、ってことで別にいいのか?


この一件の決着は、諸説ありますがまとめてみるとこうなります。


*まったくのセトのでっちあげであった。後日、ホルスの母イシスが魔術を使って仕返しする。

*セト、ほんとに行為に及ぶ。しかしながらその結果は上とおんなじ。


上記に関連した神話。

魔法を使う女神であるイシスは、息子ホルスの子を身ごもるようセトに魔法をかける。

その結果、セトの額から書記の神トートが誕生した、なんて「異説」まであるそうです。


説によっては、この時セトの額から出てきたのは後にトートがかぶることになる冠だったりしますが。

これはあくまで異説であって、トート自体ははっきり把握できないほど昔からいたエジプト最古の神の

一人、と一般には言われていますけどね。


話が少々それましたが、何にせよホルスは結果的には侮蔑から解放されます。

って、それお母さんのおかげで、君別に何もしてないやん。



おわかりいただけたでしょうか?

かなり露骨に、ホルスとセトはいわゆる”やおい”コンビなのです!

二人は王位をめぐって争う仇敵同士でありますが、同時に実の叔父・甥という親族でもあります。

しかも、叔父は甥にとっては実の父の仇です。

まるで「ハムレット」みたいですが、年代的にこっちの方がずーっと元祖なのは確かです。


経験豊かで狡猾・執拗に甥を脅かす叔父と、未熟で直情径行・でも全力をもってそんな叔父に

立ち向かう健気な甥っ子。

しかも、実際に手を出す出さない、てなエピソードまでバッチリ!!


どうですか全国のヤオイストの皆さん!萌えてきませんか?(笑)

この夏の○明は、是非とも”セト×ホルス”(リバーシブルも可)で決めましょう!!


・・・・・・では最後に、私の拙い文章などよりはるかに雄弁なイラストをもって、

当コーナーを締めくくりたいと思います。お付き合いありがとうございました。



左がホルス(受・ネコ)で右がセト(攻・タチ)です。好きだなぁこの人の絵。

↑「歴史人物笑史爆笑エジプト神話」シブサワ・コウ編 褐栄・出版より。


再度繰り返させていただきます。このコラムは全くのネタでございます。

広いお心を持って、笑って見過ごしてくださるようお願い申し上げます。


参考文献 「歴史人物笑史爆笑エジプト神話」シブサワ・コウ編 褐栄 (1996)

「七つの愛の物語〜”イシスとオシリス”から”トリスタンとイゾルデ”まで」(1996)
D・ウォークスタイン著  丹羽隆子 川口昌男訳 大修館書店



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