魁! 男塾

王家の谷の守護者たち(ファラオ・スフィンクス)

紀元前三千年
世界最古の文明を誇る
古代エジプト王朝では
歴代の王(ファラオ)はその富と権力の証として
巨大なピラミッドを構築し 莫大な財宝と共に
死の眠りについた
そして この王家の谷と呼ばれる一群の
ピラミッド地帯を守るため
最強精鋭の闘士をよりすぐり
「王家の谷の守護者たち(ファラオ・スフィンクス)」と名づけた

彼らは中国拳法とは異質の特殊な格闘術を発達させたが
対戦して生き残った者が皆無なため
その技の正体は一切不明である
なお 彼らは不老不死の肉体を持ち
五千年を経た現在でも砂漠の一角に潜み
その技を伝えているという説があるが確認されていない

民明書房刊『ツタンカーメンの逆襲』より


・・・・・・信じないでください。(笑)

さて、奇想天外な技の数々と、それを裏付ける胡散臭くも妙に説得力のある奇書の群れ「民明書房」、
漢字変換にめっちゃ困りそうなヤンキー風味炸裂のネーミングのトーナメント群で知られる
『魁!男塾(さきがけ! おとこじゅく)』の中のエジプトモチーフの連中の紹介は、
決勝リーグ第二戦前に対戦相手の名前を聞いて図書館中の本をひっくり返した
男塾塾長・江田島平八氏によってなされます。

この時点でまずすべきツッコミは、
”ピラミッドと王家の谷って全然違います!”ということでしょう。(笑)
さらに「ファラオ」と「スフィンクス」という、日本で最も知られたポピュラーなエジプト要素の単語が
ごっちゃにされていて、もうステレオタイプ炸裂って感じです。

彼らの登場は「天挑五輪DIVE会」(元ネタもぐしゃま)もとい「天挑五輪大武會(てんしょうごりんだいぶかい)」
の決勝リーグ第二戦。
でまぁ、解説者の雷電さんの「ば 馬鹿な 信じられん あの伝説が本当だったとは・・・・・・!!」
「知っているのか雷電!?」(剣桃太郎さん)
おなじみの枕詞の後、もう一度解説が繰り返されまして、
鳥人拳の飛燕が
「そう言えば ピラミッド調査のための考古学者の一団が王家の呪いによって次つぎと怪死・変死を遂げたというのは
よく聞く話だ」と継ぎます。

出ました。エジプト→ツタンカーメン→王の眠りを妨げるものに死の翼触れるべし。

古くは『王家の紋章』第一巻から近くは(近くもないか?)篠原千絵のホラーミステリー『海の闇、月の影』
(あと『エルフ17』(山本貴嗣)にも出てたよな。ギャグだけど。)
に至るまで脈々と流れている要素ですね。
まぁ確かに恐怖効果を盛り上げるのには非常に効果的だろうと思いますが。
(ちなみに、『海の・・・・・・』は別にエジプトモチーフなわけではなく、(そして十二国記でもなく)このツタンカーメンにまつわる噂を脚色したものでして、古墳の中に充満していた古代のウィルスを吸い込んで不気味な超能力を得てしまい、というのを発端にしています。)
ついでに似たような解説は『シャーマンキング』のエジプト要素でも使われることになります。
以前某番組で聞いた所によると、この「王の眠りを妨げるもの云々」というのは、
ツタンカーメン王墓の発見のスクープをロンドンプレスか何かの一社に独占されてしまった
ジャーナリストたちが悔し紛れにでっちあげたデマだそうなんですが。吉村作治先生もご本のどこかで
言ってらしたよーな。

ちなみに立っているのが副将のアヌビス。
それはそうと、登場からこのように古代エジプトのステレオタイプの塊ってことをひしひしと
感じさせてくれるファラオ・スフィンクスですが、(で、彼らの大半はこの棺桶から登場するんですけど
息は大丈夫なのか(笑))
作者は結構エジプト関連については調べたんじゃないか?と思わせるシーンもあります。


ちょっと見づらくなっちゃったから台詞を抜粋。

副将アヌビス「戦いの神ネトにいつも感謝しておる 貴様のような男を敵にまわすことのない幸運をな」

二番手ピネジェム「フッ おまかせくださいアヌビス様  男塾・・・奴等の屍をネト神のいえにえとして捧げましょう」


ネト(もしくはネイト)はエジプト神話の神々の一人で、ここで言われているように戦神です。
どんな神様かというと、一言で言えばギリシャ神話のアテナです。つまり女神さまです。すると彼らはアテナの聖闘士 げふ
古代ギリシャ人たちは、彼らにとっての先駆の文明であったエジプト文明の神々を
自分たちの神に置き換えて紹介していまして、大抵はかなり無理矢理なのですが
(ホルス=アポロンてのもかなり違うよなぁ。アポロンが太陽神というのはかなり後世になってくっつけられた
属性だそうですし。)
ネト=アテナというのはかなりすんなり当てはまると個人的には思います。
例によって、神格とか付随する役割とかはかなり違うんですけどね。
ま、こーゆーマニアックにいきそうな話はそのうち神話コーナーで。

この先はページを変えて、
彼らファラオ・スフィンクスにおける古代エジプト要素のステレオタイプとたまに垣間見える正当な要素とを
個人別に紹介してみようと思います。
(この中で使用している画像はすべて集英社文庫『魁!男塾』10〜11巻から抜粋しました。)

名前 身分 必殺技 対峙した男塾塾生
ジェセル 一番手 秘承儀ハトシェプストの奇跡、カルトゥーシュの使徒 センクウ
ピネジェム 二番手 ギザの聖眼衣(ヒエログリフ) 飛燕
石壷(クヌム)のネスコンス 三番手 秘承儀アマルナの黄昏 飛燕
セティ ツイン・スフィンクスの左将 神獣(カルナック)の泡沫 伊達臣人
ホルス ツイン・スフィンクスの右将 黒烏魔操術奥義シャンポリオンの嘆き 伊達臣人
アヌビス 副官 ネブケドの鉄馬蹂嵐 剣桃太郎
ファラオ 大将 永劫(ホレンヘブ)の輪廻核惺、イシュタールの暁星、究極処刑法オイディプスの煩悶 剣桃太郎


・・・・・・この時点で「それかなりエジプトじゃありません」て単語も見えますね。(笑)