ホビージャパン発行、TEAS事務所・著の『萌える』事典シリーズから、ヴァルキリー(ワルキューレ、ヴァルキュリア)を中心とした北欧神話の女神たちを取り上げた一冊です。
このシリーズ、萌え萌え(^^;)な二次元美少女好き層に狙いを絞っておりまして、天使・悪魔・女神・妖精・妖怪・淫魔(サキュバス)などなど、多彩な姉妹本が出ております。
正直、表紙はかなーり狙った際どいものも多く、本屋さんで買いにくいかなぁ〜という一面もあるのですが
(まあ今の時代、そういう本もネット通販を使えば気兼ねなく購入はできますけど)
この『ヴァルキリー事典』は、表紙のヴァルキリーイメージの女性キャラクターは着込んでますし、ポーズも常識的な大人しいものですし、
ちょっと際どい下半身部分は、帯付きなら隠れているので本屋さんでも買いやすい部類に入る……かもしれません(笑)
しかしこの本、むしろ萌えを目的に購入した方が某所レビューで真面目に解説しすぎて物足りないかも……と言われるほど、
北欧神話を詳細に、かつ分かりやすく取り上げていますので
萌え要素に抵抗のない方なら、北欧神話の初心者からマニアまで満足できる面のある、なかなか充実の内容なのです!
お茶くみ吹きましたw 原典での主な役割は酒のお相手って気もしますがw
冒頭から愉快な世界が展開されております。スクルドの音頭で、ヴァルキリーたちの一大デモンストレーションが勃発。
雇用主のオーディンおじさんは、3人の神様に制止を命じますが……トールとロキはどうも某映画シリーズの面影があるような?(笑)
あとフレイのルックスのが、むしろ原典トールに近い様にも見えたり。グッリンブルスティかわええ
三人の神様に解散させられたヴァルキリーたちは、リーダーのクールなお姉さんヴァルキリー・ブリュンヒルデの元に集まって
賃金アップのためには自分たちの仕事の重要性と大変さを訴えて、正当性を認めさせる必要がある・そのために北欧神話を世界観から神々まで調べ上げることに着手するのですが、
これが本の後半部分を占める『もっとくわしく! 北欧神話』の内容になっています。
前半部分は、北欧神話の簡単な概要からヴァルキリーの基本事項の説明・そこからヴァルキリーをはじめとする、北欧神話に登場する女性キャラクターの詳細解説に入ります。
このイラストで、お馴染みの甲冑姿以外のヴァルキリー、という可能性に気づかされましたw
ヴァルキリー(Valkyrjur)オーディンに仕える戦死者の運び手。下級の神に近い存在。
アース神族(Asynjur)最高神オーディンに率いられた男性中心社会の神々であるが、裏側で多くの女神が重要な役割を果たしている。
ヴァン神族(Vanadis)オーディン率いるアース神族のかつてのライバルであり、同盟者でもある神々。
巨人族(Gogjar)神々の敵であり、原初の存在でもある。女性巨人は神に求婚される美人も多い。
その他の女神・巫女(Dis・Volva)所属不明または下級の女神、そして魔法の力を駆使し神々にも劣らない活躍を見せる巫女たち(多分人間)。
取り上げられたキャラクターリスト。
ヴァルキリー | アース神族 | ヴァン神族 | 巨人族 | その他の女神・巫女 |
ブリュンヒルデ | ゲフィオン | ネルトゥス | シンモラ | ディース |
フレイヤ | フリッグ | グルヴェイグ | スカジ | ヘル |
スクルド | グナー | ラーン | シギュン | |
ヴァルハラ宮のヴァルキリー | フッラ&フリーン | ソール | グローア | |
エイル | イズン | ノート | モルニル | |
エルルーン | サーガ | アングルボザ | フュルギャ | |
フリョーズ | シヴ | モーズグズ | ||
シグルーン | ナンナ | グリーズ | ||
『ニーベルングの指環』のワルキューレ | ヨルズ | グンレズ | ||
リンド | ゲルズ | |||
フノス | フェニヤ&メニヤ | |||
シェヴン&ロヴン&ヴァール |
うーむ、「その他の女神・巫女」区分に入る「冥界を支配する女王」ヘルは、父のロキ・母のアングルボザ共に巨人族なので、
出自からすると巨人族に数えてもいいんでないか?と個人的には思えるのですが。
この『ヴァルキリー事典』、とにかく項目の豊富さには驚かされるんですけど、巻末の46冊もの参考資料を駆使して(ハッキリ言って現在入手不可能そうなものも見受けられたり……)、
普通に考えたら名前が新エッダ(=スノリのエッダ)に一か所出てるだけ・記述全3行で記事になるかあ!(笑)な存在である
女神フレイヤの娘・フノスのページも、立派に中身の詰まった記事に仕上げてしまうところなんかはお見事の一言です!w
たださすがに原典で登場3行となると、穴埋めに使われているのは北欧神話の再話物語だったりしますが(^^;)
(使用されているのは、岩波少年文庫の『北欧神話』P.コラム著、尾崎義訳 になります。)
イラストも44名ものイラストレーターが担当していてバラエティーがあるので、萌えイラストを眺める目的の方も、なかなか満足できるのではないかと。
そして後半のモノクロページ部分は、上述のように『もっとくわしく! 北欧神話』と題して
北欧の神話はここにある!
Y・T・B(ユグドラシル・ツアー・ビューロー)で行く! 世界樹満喫9世界ツアー
北欧神話の9世界は地上にあった!?
北欧神話はこんな神話!
北欧神話V.I.P.図鑑
北欧神話・神と怪物の小事典
ヴァルキリー人名録
以上のような構成になっています。
通して読めば、あなたも北欧神話通間違いなし! そしてマニアが読んでも、たとえば「北欧神話の9世界は地上にあった!?」の視点には、なるほどと思えるのでは?
ちなみに、9世界ツアーの案内人、もとい案内アニマルはユグドラシルに住むリス・ラタトスクが務めています。
ただ、大満足の内容を誇る『ヴァルキリー事典』ではありますが、不満点もなくはないです。
個人的に、最大の不満点は"スルーズ"の項目がないことですな!
雷神トールの娘と言われ、黒小人のアルヴィスに求婚されたという神話が残り、かつ『グリームニルの歌』に登場する13人のヴァルキリーの一員にも同じ名があり、
その時点で1ページ作るだけのネタは充分というのに! 一体何故なのか!!
スルーズの名前は、「ヴァルキリー人名録」(と、ヴァルキリーの章「ワルハラ宮のヴァルキリー」のページ)に1行載ってるだけのその他扱い。
詳細さにおいては北欧神話関連書籍でもトップクラスに入ろうかと思われる『ヴァルキリー事典』が、どうしてスルーズを完全スルーしているのか、個人的には結構な謎だったりします(笑)
それとこれも好みの問題なのですが、大地の女神ヨルズ(トールの母)やトールの妻シヴといった母親・妻という属性を持った女神たちのイメージイラストが、妙にロリータっぽく感じるのもなんだか……(^^;)
冒頭の、スクルドをはじめとするヴァルキリーたちの賃上げ要求は無事に成功するのか!? 含めて気になる方は、是非是非手に取ってお確かめください♪(正直大人しめのオチではありますがw)