つむじ風の臥龍
オープニング
二人目
ナコルルの登場
九人目
ナコルルの導き(対朧衆団体戦前)
ナコルルの導き(対朧衆団体戦後)
ボス戦
エンディング
離天京の奥深く、断崖絶壁の上にある牢屋。
そこに男が一人、投獄されている。日本全域を縄張りとした大山賊団の首領・『つむじ風の臥龍』である。
この男は捕らえられたのではんく、己と引き換えに、仲間の安全を保障させる為に投降したという、経緯の持ち主であった。
娑婆のような、刺激も快楽もない平穏な年月が過ぎていく。だが、ささやかな楽しみが一つだけあった。
それは格子戸から見える、建造物の高見台で月の光を浴びながら沐浴する、白い肢体の神々しい女である。
臥龍の空想では、未来の伴侶にまで膨れ上がっていた。
それに月夜でない時に、出てくる男も知っていた。白い肌に赤目の剣士。凄まじい剣気を放ち鍛錬するその様は、只者ではないと察知でき
る。
ある月夜の事、だらしない顔で沐浴に見入っている臥龍のもとへ、子分のチョビ助があらわれ、
「オォォォォオヤビィィン~。いぃぃ生きてたんでやすね!」
そう叫んで号泣し、山賊団の仲間が皆殺されたことを告げる。呆然とする臥龍が、鉄格子の前で崩れ落ちる。
「……外道めが、許せねぇ! ……よくもワシとの約束を!!」
失った仲間の顔と共に、あの美しい女の姿がよぎる。これでは、あの剣士に捕らわれているであろう女の命も危うい。
「……ぬぬぬぬ、未来の伴侶殿まで殺らせはせんぞ!」
臥龍の勘違いかもしれない。しかし、牢屋の扉は爆音と共に砕け散った。
チョビ助「おやび~ん。待ってくだせぇ~」
臥龍「チンタラすんじゃね~や、ちょび、オゥ」
チョビ助「そ、そんなぁ~速すぎるんでさぁ、おやびんがぁ」
臥龍「オゥ、そんな事よりこんな牢屋とはよ……さっさとオサラバしようぜ、オゥ」
チョビ助「へいっ、がってんでさぁ~」
臥龍「んっ!? ちょっと待てや、ちょび」
チョビ助「なんでやす、おやびん」
臥龍「……オゥ!!」
チョビ助「へいっ!!」
臥龍「お前じゃねぇ~や、ちょびこう」
チョビ助「へっ?」
臥龍「オゥッ! そこの闇でコソコソ隠れてるネズミヤロウ! 出てこいや、オゥ」
半蔵「黙ってやり過ごせば、死なずにすんだものを」
臥龍「なんだと、オゥ。この山賊中の山賊……つむじ風の臥龍にむかってやり過ごせだと、オゥ!!」
チョビ助「おやびん、カックイーッ! カックイイッスよ!!」
臥龍「オゥ、ちょび助。隠れてな」
チョビ助「ヘイッ、もう隠れてやす」
半蔵「おぬしに恨みはないが、姿を見られては仕方がない。闇に滅せよ」
臥龍「オゥ、しゃらくせい。やってやらあ、オゥ」
ナコルル「お願い……。助けて、暗黒の闇が……。黒い力が……。破壊が……来るの……。
どうか……。あなたの……力で……。邪悪な力を……止めて……下さい。覇業三刃衆を……」
チョビ助「おやび~ん、はやくぅ。早く来て下せい」
臥龍「オゥ、何急いでんだい、オゥ」
チョビ助「花が、花がいっぺい咲いてるんですよぅ!!」
臥龍「オゥ、何だこの一面の花畑は、オゥ」
チョビ助「分かんないっすけど。きれ~だなぁ」
臥龍「オゥ、離天京にこんな所があるなんざ、聞いた事もね~ぞ、オゥ」
チョビ助「ほんとにきれ~だなぁ~」
臥龍「オゥ、いつまでニヤニヤしてんだ、オゥ。いくどっ!!」
チョビ助「えっ? どこへでやす? あ~っ、あんな所に建物が。待ってくだせい、おやび~ん!!」
臥龍「オゥ、ちょび。何の建物だ、こりゃ?」
チョビ助「そんな事オイラに聞かれてもぉ~。
…………。ヒッ!! ヒィーッ!!!」
臥龍「オゥッ!! ちょび助、どこに行くんだ、オゥ」
チョビ助「オッ!! オヤビ~ン、後ろ、後ろ!!」
臥龍「何、後ろだと……!! 何だ、テメエは、オゥ?」
無限示「ウヌのような、醜い姿でっ!! 我が神聖なる聖域を汚した罪、死をもってあがなえ!!」
ナコルル「私の話を聞いて。私の名はナコルル。光の巫女。あなたにお願いがあるの。
今、あなたの目指している人は、恐ろしい人達の仲間。その人達の名前は、覇業三刃衆。
邪悪な意志を継ぐ恐ろしい人達……。二十年前……。邪悪な意志の元となった人物が現れたの。名前は朧。
その人物は、今の世の中を混乱させて、強い者だけが生き残る国を創ろうとしているわ。
その時に朧は、邪魔になる私たち光の巫女を恐れて封印したの。お願い。私はもうこれ以上うごけないから。
でも、もう一人の光の巫女。彼女ならきっとあなたの助けになるはずよ。彼女はこの先で永い眠りについているわ。
お願い、あの娘を助けてあげて。名前はリムルル。私の妹なの」
朧衆「光の巫女を助けに来ただと。己ごときの力量で我々を倒しに来たとは笑止!返り討ちにしてくれるわ。覚悟!」
ナコルル「ありがとう。もうすぐこのリムルルも目を覚ますわ。貴方が傷つき、先の道へ進めなくなった時、リムルルがあなたの助けになると思うの。
ありがとう……。どうか……邪悪な意志を……滅ぼして……」
臥龍「オゥ!! ついに見つけたぞ、この大悪党め」
刀馬「何だ、貴様」
臥龍「オゥ、知らばっくれんじゃねぇ~ぜ、オゥ。よくも、ワシのかわいい子分達を手にかけてくれたな、オゥ」
刀馬「…………」
臥龍「それに、罪もねえあの姫さんまでさらうたぁ~、この人でなしめが、オゥ。
何処へ隠したんだ!! ワシの花嫁をよ」
刀馬「貴様……世迷い言もそれぐらいにしておけ」
臥龍「オゥ!! このつむじ風の臥龍、山賊の名に賭けてオメエを成敗してくれるわ、オゥ」
刀馬「オレは、二度と同じ事は言わん。死ね」
臥龍「オゥ、兄ちゃん。渡世の波は海よりしみるぜ、オゥ」
(倒れている刀馬を見下ろす臥龍と、その後ろのチョビ助)
臥龍「オゥ若ぇの。おめえ、なかなかの男っぷりだったぜ。だがな、この臥龍様に挑もうなんざ100年早いぜ、オゥ」
チョビ助「かっ、かっくいい~。かっくいいなあ、おやびん」
臥龍「んっ? オゥ、ちょび。誰か来る。面倒だ、隠れろ!!」
チョビ助「合点でやす」
(二人が隠れて後やって来た命が刀馬を抱き起こす)
命「誰? ……刀馬様? ………。どうなされたのですか、刀馬様!! 誰が、誰がこんなひどい事を……」
(様子を窺っているチョビ助と立ち尽くす臥龍)
臥龍「………………」
チョビ助「おっ、おやびん。あの娘、おやびんの花嫁では……?」
臥龍「静かにしろ、ちょび助」
チョビ助「エ、エヘヘ。何だかあの二人~~、あやしいですね~ぇ」
臥龍「………………」
(刀馬を抱き起こしながら涙ぐむ命)
命「刀馬様……。もう私は、あなたの傷つく所を……見ていられない……」
(天幻城を出る臥龍と後に続くチョビ助)
臥龍「……帰るぞ、ちょび助」
チョビ助「えっ、え~っ、いいんでやすかぁ、花嫁は?」
臥龍「野暮な事言うんじゃねぇぜ……人の恋路を邪魔するヤツァ、馬の耳にふんどしって言うだろうが、オゥ」
チョビ助「むっ、難しい事知ってやすねえ~おやびん」
臥龍「あばよ、月下の花嫁。いい夢だったぜ」
チョビ助「しっ、シブイっすよ~っ、シブすぎるぅ~」
(天幻城の厩までやって来た臥龍とチョビ助。刀馬の乗る黒馬、隣の柵内に子馬がいる)
チョビ助「おやびん? 何で馬屋なんかに来るんすか?」
臥龍「バカヤロウ!! オゥちょび、転んでもワシらは山賊だぜ!! 女の心は盗めなかったが、あの兄ちゃんの馬をいただくのよ」
チョビ助「さすがっすね、おやびん!!」
臥龍「見てみろ、いい馬じゃねぇ~か、オゥ」
チョビ助「おやびん、それであっしの馬は? ……まさか……」
臥龍「可愛いじゃねぇ~か、えっ、ちょび助」
チョビ助「そっ、そんなぁ~っ」
(夕陽に向かって、刀馬の馬に乗り走っていく臥龍。隣を走る子馬)
臥龍「オゥ、ちょび。早く来い!!」
チョビ助「待って下さいよぅ、おやび~ん」
馬「ヒヒィーーン!!」
臥龍「モタモタしてっとお天道様に笑われるぜ、オゥ!!」
(チョビ助のアップ)
チョビ助「つっ、つらいっすよぅ……」
(臥龍と馬達の後を追っていくチョビ助)
チョビ助「おやびぃ~~~~ん!!」