サヤ(沙耶)
オープニング
ナコルルの登場
五人目
ナコルルの導き(対朧衆団体戦前)
ナコルルの導き(対朧衆団体戦後)
八人目
ボス戦
エンディング
川原で凜花が寝そべっている。向こうの方から金髪で美しい肢体の女が歩いて来る。凜花の頭上で立ち止まり顔を覗き込む。
「ぁ~あ、サヤ(沙耶)。いい天気だから寝ちゃったみたいだ」
軽く伸びする凜花の横に、しなやかに身を横たえるサヤ。優しく微笑みかけて、
「ゴメン。起こす気はなかったんだけど。でも、なんとなく逢いたくてネ」
寝ぼけ眼をこすりながら凜花が云う。
「えっ……サヤが、アタシに? ……何?」
美しい青い瞳が川面をぼんやりと見つめる。
凜花の返事にも、うわの空で、
「ちょっとね……」
曇りがちなサヤの表情を受けて、敏感に反応する凜花。そっと、凜花が愛鼠の鉄之介を差し出すと、サヤの瞳から涙がつたった。
凜花の頭を抱き寄せるサヤ。
「どうしたの? ……サヤ……何か辛い事あった? …………」
頬を拭い立ち上がり、凜花の側から距離をおいて振り返り笑顔で云う。
「なんでもないわ……。私情の絡んだ仕事が舞い込んだだけ、心配させて御免ネ。この仕事終わったら甘物屋へ行こう。おごっちゃう!」
サヤの後ろ姿に、凜花は大人の女が背負う哀愁を、垣間見たような気がした。
ナコルル「お願い……。助けて、暗黒の闇が……。黒い力が……。破壊が……来るの……。
どうか……。あなたの……力で……。邪悪な力を……止めて……下さい。覇業三刃衆を……」
サヤ「…………。あら、お兄さん。そんなに見つめられたら、いくら私でもテレちゃうわ」
灰人「…………」
サヤ「でも気持ちは分かるわ。イイ女ですもの、私って」
灰人「…………」
『ブチッ!!』
サヤ「でもあなたみたいな人、好みじゃないのよ。ゴメンネ」
灰人「…………」
『ブチッブチッ!!』
サヤ「なんかさっきから、あなたの頭で変な音がしてるんだけど……?」
灰人「ナンデインダヨ」
サヤ「なんでっていわれてもぉ」
灰人「テメエみたいなのがいるから、イラツクんだよ」
サヤ「何? ……もしかして私、キラワレテルの?」
灰人「ムカツクンダヨ、テメエミタイナノワ」
サヤ「……? あら? ……良く見たらあなた、この国の人っぽくないわね……」
『ブチッブチッブチッ!!!!!』
サヤ「ふ~ん。あなたの過去は知らないけど、人を見た目で判断するなんて。はやらないわよ、今時」
灰人「驕るな!!」
ナコルル「私の話を聞いて。私の名はナコルル。光の巫女。あなたにお願いがあるの。
今、あなたの目指している人は、恐ろしい人達の仲間。その人達の名前は、覇業三刃衆。
邪悪な意志を継ぐ恐ろしい人達……。二十年前……。邪悪な意志の元となった人物が現れたの。名前は朧。
その人物は、今の世の中を混乱させて、強い者だけが生き残る国を創ろうとしているわ。
その時に朧は、邪魔になる私たち光の巫女を恐れて封印したの。お願い。私はもうこれ以上うごけないから。
でも、もう一人の光の巫女。彼女ならきっとあなたの助けになるはずよ。彼女はこの先で永い眠りについているわ。
お願い、あの娘を助けてあげて。名前はリムルル。私の妹なの」
朧衆「光の巫女を助けに来ただと。己ごときの力量で我々を倒しに来たとは笑止!返り討ちにしてくれるわ。覚悟!」
ナコルル「ありがとう。もうすぐこのリムルルも目を覚ますわ。貴方が傷つき、先の道へ進めなくなった時、リムルルがあなたの助けになると思うの。
ありがとう……。どうか……邪悪な意志を……滅ぼして……」
サヤ「キャッ!! 何っ、けもの?」
臥龍「…………」
サヤ「くっ熊が、何でこんな所にいるの?」
臥龍「…………」
サヤ「しっしっ!! あっちいけ。森へお帰り」
臥龍「…………。オゥ、ネ~チャン。ワシに向かって言ってんのか、オゥ」
サヤ「ヒャッ! 熊がしゃべったわ?」
臥龍「ええ加減にせんと、身ぐるみはぐど、オゥ」
サヤ「なっ何、人間なの? 人だったら、人らしい姿しててよね!!」
臥龍「オゥ、ネ~チャン。オメ~も、人の事言えた義理か、オゥ!! フン!! ゴタクはええから、その服と金置いていけや、オゥ!!」
サヤ「……あなた、やっぱりけものだわ」
臥龍「オゥ!!」
サヤ「あなたが三刃衆・朧ね」
朧「フォフォフォ。何のことじゃて。ワシには皆目見当がつかんが?」
サヤ「ご老人、とぼけてもダメよ。あなたのその体、血の臭いがプンプンするもの」
朧「女、ヌシは何故ワシを追う?」
サヤ「あなたはあまりにも人を殺めすぎたわ。そして……私の両親も……」
朧「くっくっくっ弱い者が敗れ、強い者が生き残る……。自然の理に従ったまでよ」
サヤ「弱い者は生きる価値がないと?」
朧「クッカッカッカッ。自然の理に従ってウヌも死ねや」
(夕暮れの森の中、サヤの前に忍び装束の女が立っている)
女「戦いはまだ、終わっていない」
サヤ「何者?」
女「我が名は弁天の柊呼。三刃衆が一人」
サヤ「三刃衆ですって……そんなはず……」
弁天の柊呼「数年前、我が三刃衆によって、英国人の一家が殺害された。だが、一人だけ生き残った……。娘のサーシャ」
サヤ「何故それを?」
柊呼「おまえは知りすぎている、三刃衆の秘密を」
サヤ「もしかして……あなたが……殺したの……」
柊呼「二人があの世で待っている。おまえも後を追え!!」
(宙に舞う柊呼と地上で迎え撃つサヤ)
サヤ『シュッ!!』
柊呼『ハッ!!』
『ガキン!!』
『ドサッ!!』
(地に倒れた柊呼に駆け寄るサヤ)
サヤ「………。出来ない……私には出来ない……母さん」
柊呼「!! ……何故……何故、分かったのサヤ」
サヤ「……どんなに顔を隠しても、たった一人の母さんよ……」
柊呼「サヤ、斬りなさい……あなたの両親を殺したのは……私です……」
サヤ「何故……どうして、どうしてそんな事が……」
柊呼「この国は長い幕府の繁栄によって貧富の差が生まれ、弱い者は日々怯える暮らしをしていた。
そんな世を正す為に私たちは三刃衆になったの。だけど、朧は違ったわ……。
目的の為には、何の罪もない人々をいともたやすく殺めて行った……あなたの両親のように。
耐えられなかった……そして私たちは逃げた。囚われていたあなたと共に……。だけど、夫は私たちの盾となり、この世を去った。
私たちに、生きろと言って……」
(嘆くサヤ)
サヤ「そんなのっ……そんなの悲しすぎるわ!!」
柊呼「良いのですよ、サヤ……。私はこの日の為にあなたを育てたのですから……。それが私に出来るせめてもの償いなのだから……」
サヤ「…………。……ウッ……ウウウッ……」
(柊呼に馬乗りになり武器を振り上げるサヤ)
サヤ「ウァァァァァァァァンンン、ウアァァァンンン……どうして……どうして……どうして育てたりしたのよ!! ウアァァンンンンッ……ンンン…………。
……グスン。……グスン……。……母……さん……」
(武器を投げ捨て柊呼から離れるサヤ)
サヤ「この街には……私のような……境遇の子が……沢山います……。その子達は、親がいなくて困ってるわ……。
……育ててくれて……アリガトウ……母さん」
柊呼「ゴメンネ……サヤ」
(立ち上がり歩き出すサヤ、起き上がり見守る柊呼)
サヤ「……私の母さんはもう死んだわ……。今日から、私は一人。死んだ母さんが教えてくれた女の生き方を、一人で歩んで行くわ。
だって、女が頑張らないと、この国の男達は頼りないもの。それに……私とびきりのイイ女ですもの。イイ女は、メソメソしていられない
わ」
柊呼「…………」
サヤ「さようなら……ママ」
(立ち上がりサヤを見送る柊呼)
柊呼「さようなら……サヤ。あなたのとびっきりは私が保証するわ……。だって、私の愛する娘ですもの」