魔界に関する一考察〜アンブロジァ編〜


ポリゴン侍魂・略してポリサムは、基本設定については資料としてユーザーに提示されているものが少ないため、

数多くの謎が含まれていますが、中でも多いのはボスであるユガと、続編「アスラ斬魔伝」の主人公・アスラでしょう。

特にアスラについては殆ど何も分かっていません。

そこで、彼らについて公開された資料に基づき、例によって好き放題に憶測を重ねてみるというページです。ちょっと長め。



1.アンブロジァ


アスラ・ユガについて多くが謎である、または謎めかされているのは何故かと考えた時、

彼らは魔界の住人、少なくとも魔界に深いかかわりを持つキャラであり、サムライスピリッツにおける魔界の位置付けを鑑みると、

そもそも魔界に関する情報自体ほとんど明かされていないという事実に気づきます。

そこでまず、サムライスピリッツ、以下サムスピにおける魔界を代表する存在・アンブロジァ(※1)について見ていくことにしましょう。

シリーズ第五作目にあたる、(※2)ポリサムの攻略ムック

『侍魂〜サムライスピリッツ〜完全攻略マニュアル』(芸文社・ネオジオフリーク編集部責任編集 1998年)の

開発Q&Aでは、アンブロジァについて次のように述べられています。




アンブロジァとは、魔界における最高位の暗黒神の象徴であり、崇拝の対象でもあります。

その存在を確認したものはなく、したがってユガ自身がアンブロジァそのものなのか、

分身なのか、または自分自身がアンブロジァになろうとしているのかは不明です。




1行目から判断すると、すなわちアンブロジァとは「魔界の神」、もしくは神に近しい何かと定義されているようです。

そもそも、初代サムライスピリッツにおいてボスである天草四郎時貞を復活させたのがアンブロジァであり、

その意味ではそもそもの発端とも言えるのですが、アンブロジァについて語られたことは殆どありません。

最も詳しい記述と言えるのは、初代サムライスピリッツ・及び真サムライスピリッツ(以下真サム)における天草四郎時貞の公式ストーリー。


魔界(=死の世界?)に堕ちた天草に語りかけてきた場面です。アンブロジァが主体的に行動したのは、事実上これが最初で最後

(現時点で)ではないでしょうか。




「現世での恨み、晴らしたいとは思わないか、天草よ」

「我が名はアンブロジァ。お前らが神と呼ぶものよ」(初代)



天草の何者かという問に対するアンブロジァの答えとして、

真サムでリライトされた初代サムライスピリッツのオフィシャルストーリーでは、




「我の真の名は誰にも呼べない。アンブロジァと呼ぶがよい」

「貴様ら人間どもには、神とも呼ばれている」(真)



と変更されています。

なお、真サムのストーリーではアンブロジァに対し注釈が着いていて、


「あえて表記したが、日本語で表す事はかなり難しい。どうか「アンブロジァ」とハッキリ発音しないでほしい。」

……知らね〜よ……(十六薙夜血風に)

そういう点でも、アンブロジァの不可解さを演出していると言えますね。

(なお、真サムでリライトされた初代サムライスピリッツのオフィシャルストーリーにおける記述では、

タムタムのストーリーにて、アンブロジァを表現する際「魔界の王」という言葉が使用されています。)




また、真サムの設定の中で、ボスである魔界の存在・羅将神ミヅキがその目的のために狙っている”特別な魂”がありました。

ミヅキの目的は、仕える主であるアンブロジァの「更なる兇神化」であり、

そのためには聖石パレンケストーンと魔石タンジルストーン、さらにこれらを「黄珠魂」と変じさせるための魂が四種類が必要となります。




【北方】釈迦如来・玄珠魂                 持ち主はナインハルト・ズィーガー 

【南方】宝勝如来・紅珠魂                 持ち主は覇王丸

【東方】薬師如来・蒼珠魂                 持ち主は柳生十兵衛

【西方】無量寿如来・白珠魂                持ち主は千両狂死郎



と、ざっと見ると中国の五行説と仏教がちりばめられた語句が並んでいます。

上記の四つの魂は「魔石タンジルストーン」に封じられることで「黄珠魂・闇」と変じ、

「大日如来・黄珠魂」と表記される「聖石パレンケストーン」と一対となり、

両秘石を融合する事で、アンブロジァは更なる兇神化を遂げるのです。

この相関図において、アンブロジァは「闇の大日如来」または「真魔」と表現されています。


「大日如来」について・wikipediaより


簡単にまとめますと「大日如来」とは、

真言密教の本尊。宇宙を照被する大日輪の意味。金剛界(智)と胎蔵界(理)の二身がある。

「宇宙の全てを仏としたもの。色も形も超越した絶対的な仏・諸仏の根本である仏」

言い換えれば、真言密教においては、大日如来はすなわち宇宙の根源であるとされています。

その定義を踏まえればアンブロジァとは闇・影・陰・負の側に立った宇宙の根源であり、

そうするといわゆる人格神……つまり、大抵の世界の神話に見られる”擬人化した神、キャラクターを持った神”ではない、

という可能性が出てきます。

この真サムライスピリッツで提示された可能性を踏まえて、上記したポリサムにおける「暗黒神の象徴であり、崇拝の対象」という

設定が完成したのではないでしょうか。


すると、「闇の大日如来(負の宇宙の根源)」にして「真魔」である暗黒神を現出させようとする(もしくは、させようとしていた節のある)

ユガとは一体何者なのでしょうか。考察その2に続きます。




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(※1) アンブロジァの意味ですが、英和辞典によりますとギリシャ神話に同音の単語があるようです。

AMBROSIA=ギリシャ神話の神々の食物で、不老不死になれると言います。

元来はギリシャ語で、ambrosios=「不死のもの」を意味したそうです。


(※2) 天草・ミヅキのサイクルで語られる2D時代のストーリーは「天草降臨」で完結しているので、

ユガ編と言ってもいいポリゴンシリーズはサムスピ第二部、という言い方もできるのでは?と思います。