いろは 物語りまとめ
※初登場作はこの色
※続投作品はこの色
無色は出場していない作品
◆概要
サムライスピリッツ(以下サムスピ)の2D格闘ゲーム最終作、と銘打たれリリースされた
『天下一剣客伝』(以下剣サム)の4人の完全新規キャラクター中、唯一の女性キャラクターであるいろはは、
ゲーム関連雑誌では最後に紹介された新キャラであり、最も話題をさらったキャラクターでもある。
いろはは異なるモチーフを融合させて作られており、
ストーリー部分はよく知られた日本昔話の『鶴の恩返し』(『鶴女房』という場合もある)を題材にしている。
明確な下敷きとなったモチーフのあるキャラクターは、サムスピでは極めて珍しい。
(初代には天草四郎時貞という実在の人物に伝奇的解釈を施したキャラクターが存在し
RPG『武士道烈伝』には源義経の魂が憑依したという設定の牛若姫がいるが、いずれも史実の人物の業績や
それを題材にした伝奇物語はほぼ関係ない、またはなくなった、サムスピ独自のキャラと言える。
初代から登場している覇王丸や橘右京は宮本武蔵や佐々木小次郎をモデルにしているというが、上記のキャラクターと同じく
原型を作るヒントに留まり、キャラクターやそのストーリー自体はサムスピ独自のものである。)
一方いろはのデザイン部分は、当時流行したサブカル的解釈を施されたメイドをモチーフにしている。
なおかつ衣装や体形は、製作スタッフが「色気のあるキャラを出したい」と語ったとおり
見るからに性的要素を想起させるものとなっており、特定の男性層に狙いを絞っているのが一目瞭然である。
『鶴の恩返し』という有名な昔話と「アキバ系メイド+お色気要素」という特定層へのアピール要素を融合させたいろはは
狙いを定めた層には歓呼の声で迎えられ、他方主にこれまでのサムスピを支持してきた層を中心に"媚びすぎ"と反発や嫌悪を以て迎えられた。
サムスピのお約束部分を軽やかに振り切って誕生した、ある意味斬新なキャラであるいろはだが
限られた層とは言っても登場当時の反響は大きく、かつてサムスピと言えばナコルル、と言われたのと同様に
SNKプレイモア(製作悠紀エンタープライズ)製サムスピと言えばいろは、というほど浸透したキャラとなり、
いろはをきっかけにサムスピに引き込まれた層も存在した点では意義のあったキャラと言えるだろう。
剣サムにしか登場しない彼女のストーリーを見ると、
これまでのサムスピに登場した女性キャラとは明らかに違う展開を見せている。
鶴の姿で罠にかかった所を救われた恩のある若者(いろはは"旦那様"と呼んでいる)の家を訪れ
甲斐甲斐しくその世話をしていたいろはは、彼の様子が変わったのを見て
(いろはは気付いていないが、彼女への恋煩いである)彼を幸せにするために御前試合に参加する。
エンディングでは、御前試合の主催者徳川慶寅に「旦那様を幸せにしてください」と告げて飛び立ち
"旦那様"の元を去るが、しばらくの後彼の様子を見に来たいろはは、待ち構えていた慶寅に
"旦那様"が彼女を必要としていることを告げられ、再び共に暮らし始めるのである。
歴代のサムスピの女性キャラが戦う理由は大体が使命感であり、
なおかつ彼女たちには、淡い思いを抱くことはあっても決まった関係の男性キャラがほぼ存在しなかった。
(例外は反面のアスラと子を生すまでに至った色と、その娘で九鬼刀馬に明確な恋心を抱いている命の二人のみだが
彼女らの場合も戦う理由は愛した男性のためではない)
いろはの場合、最初から明確に"旦那様"という一人の男性のためだけに行動しており
戦う理由も徹頭徹尾、"旦那様"のため以外にはない。
ここでもサムスピのこれまでのフォーマットに当てはまらない斬新ぶりをいかんなく発揮している。
ただ一度目を転じれば、歴代サムスピシリーズ以外の所ではむしろ使い古されたフォーマットではある。
いろはの勝利台詞もまた、全て"旦那様"に語りかけている形式で
いろはを使用するプレイヤーは、そう望むのならこの台詞を自分自身へ向けたものと捉えて
いろはとの疑似恋愛を楽しむことが可能である。
格闘ゲームをプレイしながら、恋愛シミュレーションゲームぽく楽しむことができる、というのも
これまでのサムスピには存在しなかった要素と言えるだろう。
◆関連キャラクター
いろはの恩人であり大切な人にもなった若者"旦那様"以外には、
ストーリーモードの中ボスとして登場するキャラクターに緋雨閑丸と真鏡名ミナがいる。
閑丸はいろはに「子供が刀を振り回しちゃ駄目です!」「子供は子供らしく! ね!」と非常に真っ当なのだが
ある種押し付けがましく言われて「女の人が刃物振り回したら男の人に嫌われますよ!」と言い返す、
微笑ましい一幕を見せる。
真鏡名ミナとはお互いのストーリーモードでの中ボスであり、
いろはは鶴の化身である自分を見逃してくれるミナに敬意と好意を示しながらも、御前試合ではちゃっかりと負かしている。
また、剣サムにおいて『サムライスピリッツ零』と剣サムで登場したキャラは『サムライスピリッツ』(初代)と
『真サムライスピリッツ』のキャラの中ボスになる法則があるが、服部半蔵の四回戦の相手として登場するいろはは
敗北するとひたすら"旦那様"に詫びる事に終始し自分の殻に閉じ籠もっている(笑)。
ミナの中ボスの場合も同様である。
ただママハハとシクルゥコンビの御前試合の相手をした時は、エールを送っている。
CPU登場台詞では、パピー・チャンプル・パクパクに(同じ鳥獣の身のよしみか)優しく言葉をかけ、
銃剣を武器にする"米国零代大統領"アンドリューに対しては"鉄砲"に怯えた様子を見せる。
ゲーム中では奥州・漆山となっているが、現在の山形県漆山(鶴女房伝説の残る地)は江戸時代には奥州=陸奥国(現在の青森・岩手・宮城・福島県及び秋田県の一部までの東北地方に当たる)には含まれていない。
正確には、若者が名前を尋ねたとき"もう少し長い言葉を喋ったようだが"最初の「いろは」という言葉しか聞き取れなかったという。