真鏡名ミナ 物語りまとめ


※初登場作はこの色

※続投作品はこの色

無色は出場していない作品

リリース順 作品全体の物語 時系列 キャラクター別物語
サムライスピリッツ(初代)  暗黒神アンブロジァによって復活した天草四郎時貞の怨霊が引き起こした異変を鎮めるべく、十二人の剣士が島原へ向かう。 サムライスピリッツ零  琉球王国(沖縄)で、強い霊力を持って生まれ、あやかしを討伐する"妖滅師"として生きてきた少女真鏡名ミナ。
 家族と疎遠となり、強過ぎる霊力のため人に疎まれ、物ごころ着いたときから一緒にいたシーサーのチャンプル以外には友も無かった。
 ある日近隣でのあやかし討伐の帰り道、ミナは故郷の村から強過ぎる邪気を感じ急いだが、そこには壊滅した故郷があった。唯一生き残ったチャンプルを連れ、ミナは日輪國から流れる強大な邪気を目指して仇討ちの旅に出る。

 エンディングで戦いに疲れ切り、仇討ちを諦めようとしていたミナの目の前でチャンプルが凶暴なあやかしへと変身する。故郷を滅ぼしたのと同じ邪気を感じ、真実を知ったミナはチャンプルに向け弓を引き絞る。後を追うと語りかけながら。
真サムライスピリッツ  アンブロジァに仕える魔界の巫女・羅将神ミヅキが甦った。十五人の剣士たちが、ミヅキの本拠地恐山へと向かう。 天下一剣客伝  琉球のとある山の奥で、妖滅の仕事をした村の人々に世話された小屋でチャンプルと平穏に暮らしていたミナは、日に日に強くなっていく邪気を感じとり、そっとしておいてほしいと思いながらも妖滅師の使命のために旅立った。

 鶴の化身いろはと一戦交えた後、御前試合で肉親をも手にかけた深い業を持つ妖怪腐れ外道を妖滅したミナ。
 エンディングで、徳川慶寅がチャンプルに頼まれて探し出した父親の行方を彼女に告げる。ミナの父はとうに死亡しており、父の一族という老婆によって、ミナは憎んでいた父が自分と母を最後まで愛していたことを知る。
 止まっていた時間は動き出した。少しずつでも上を向いて歩いて行くことをミナは決意した。
斬紅郎無双剣  「鬼」と呼ばれる無情にして強力の剣士・壬生月斬紅郎を斃すため、十二人の剣士が立ち上がる。 サムライスピリッツ(初代) 登場なし
天草降臨  天草四郎時貞が光(善)と闇(悪)に分裂し、闇の天草は島原に魔城を建立。十七人の剣士たちが島原へと向かう。 斬紅郎無双剣 登場なし
侍魂(64)  人形師に身をやつす魔界のもの・壊帝ユガが復活。十一人の剣士たちがユガの元へと向かう。 天草降臨 登場なし
アスラ斬魔伝  ユガの敵対者である魔界のもの・アスラが地上へ現われる。壊帝も再生し、十三人の剣士たちはユガを葬るため立ち上がる。 真サムライスピリッツ 登場なし
甦りし蒼紅の刃  二十年後。江戸近海の小島に存在する「離天京」を支配する覇業三刃衆を倒すべく、様々な立場の剣士たちが三刃衆の居城「天幻城」へと向かう。 侍魂(64) 登場なし
サムライスピリッツ零  初代の二年前。幕府に反旗を翻した武将・兇國日輪守我旺は魔界のもの”闇キ皇”にとり憑かれた。引き起こされる異変を鎮めるべく、二十四人の剣士たちが戦の場・黄泉ヶ原へと向かう。 アスラ斬魔伝 登場なし
天下一剣客伝  本編の時間軸とは関係しないパラレルストーリーであり、エンディングは基本的に登場キャラクターの望みを叶えたものとなっている。
 枠組みとしては、零の主人公徳川慶寅が主催する御前試合に四十一人の剣客たちが集うとなっている。
サムライスピリッツ閃 登場なし
サムライスピリッツ閃  アスラ斬魔伝の結末の幾つかを無効にした翌年の出来事。
 レスフィーア王国出身の軍人ゴルバが、祖国の再建のため日本は天降藩の鈴姫と前国王の形見のバスタードソードを狙って日本に刺客を差し向ける。ゴルバの陰謀に巻き込まれた剣士たちは彼の居城を目指す。
甦りし蒼紅の刃 登場なし


概要

真鏡名ミナは、『サムライスピリッツ零』(以下零)から登場した四人の新キャラクターの一人であり、

唯一の女性キャラクターということで一番の顔=一番のウリとなっていたキャラクターである。

彼女はそれまでのサムライスピリッツ(以下サムスピ)シリーズには存在しなかった

琉球王国(現在の沖縄県)出身キャラクターであると同時に、格闘ゲーム初の”弓矢使い”であり、

かつ”妖滅師”・すなわち”あやかしを滅する者”=魔物退治を専門職としている設定だが、

実はこの点が、意外にもサムスピでは稀有な要素となっている。



サムスピは初代『サムライスピリッツ』から”魔界の暗黒神”アンブロジァが登場し、ほとんどのボスキャラが魔界に関係した存在だが

そのわりに魔物退治に関わっているキャラクターがほとんどいない。

ミナが登場した零・『天下一剣客伝』(以下剣サム)以前のサムスピで、魔物退治を専門にしていたキャラクターには

花諷院和狆(『真サムライスピリッツ』)と八角泰山(『アスラ斬魔伝』)がいるが、

両者ともゲームストーリーが始まった時点で前者は引退済み・後者は隠棲生活中であり

ゲーム開始時点で魔物退治をしていたわけではない。

また女性キャラクターでは『真サムライスピリッツ』のボス羅将神ミヅキが憑代とした舞姫・美洲姫(のちの阿国)は

かつて舞の力で魔物の調伏を行っていたという設定だが、ゲーム中ではミヅキの憑代としてしか存在していない。

平たく言えば、大半のボスが魔界の存在(または魔界に関わった存在)なのが特徴であったシリーズの割に

過去のサムスピで”魔物退治を専門職とするキャラクター”は設定の中にしか存在していなかった、ということになる。



真鏡名ミナはストーリー開始時点から妖滅師の仕事をしており、その帰り道強大な邪気を感じ、

故郷の村を謎のあやかしに滅ぼされたことを知り、”初めて自分の意志で弓を引く”ことを決意するのである。

(ミナ以降にサムスピで魔物退治の専門家として登場したキャラクターには、剣サムの新キャラ機巧おちゃ麻呂がいる。

しかし羅将神ミヅキ調伏に参加した後は数百年眠りについていたので、その意味で現役だったとは言い難いが。)




そして妖滅師であることは彼女の大きなステータスであり、ある意味で心のよりどころにもなっている、とも言える。

というのも設定上、ミナは”物ごころついたときから行動を共にする”シーサーのチャンプル以外に

親しい者が誰もなく、齢十七歳にして孤立した生き方を余儀なくされているからである。



生まれつき霊力に秀でていたため、琉球王国の神女(かみんちゅ)となるべく育てられたミナは、

”強過ぎる霊力のため人々に疎まれ、徐々に笑顔を忘れていった”という。

剣サムのミナのオープニングストーリー注釈(※1)によれば、

「妖滅師とは稀有な存在で、畏れ、敬われている。」とあるが、妖滅師となる以前のミナは何故人々に疎まれていたのだろうか?

ヒントになりそうな言及が、剣サムのレラのエンディングにある。

ここでミナは自ら「私の力は、滅することしかできない」と言っている。

とすれば、ミナが人々に疎まれた主な原因は

彼女の持つ”強過ぎる霊力”が、滅する=滅ぼす・殺す方向にしか発揮できない(と判明した)から……ではなかっただろうか。

あやかし=妖怪・魔物という人間を脅かす邪悪な力を持つ存在を滅ぼすには有効だが、

それを除けば滅する方向に働くのみの霊力しか持たぬ神女(かみんちゅ)とは

市井の人々にとって極力関わりたくない存在だったのかもしれない。



そういった状態にあったミナが唯一の心の支えにしていたチャンプルは、

零のエンディングで凶暴化し、彼女の故郷を滅ぼした仇だったことが明らかになる。

愕然としながらも、妖滅師として心を奮い立たせたミナは役割を果たすべくチャンプルに矢を向ける。

「私もすぐ……いくから……。」「ずっと一緒にいようね」と語りかけながら。

アーケード稼働時代、いわゆる”残虐レベル”を下げている所では見られなかったが、

ミナの最後の台詞は、真っ白な背景一面に被さる血飛沫と共に表示される。

彼女がチャンプルに流させた血か、またはチャンプルがミナに流させた血か、あるいは相打ちか。

そのような不吉を感じさせる演出は、(時系列上)零以降のシリーズにミナが登場しない理由を説明しているように思えるのだが……?

ミナは果たして零で死亡したのだろうか?の項を参照のこと。



関連キャラクター

初登場の零では、幼い時から常に行動を共にしていたシーサーのチャンプル以外関連キャラクターがいなかったミナだが、

続く剣サムでは(主に妖滅師として)様々なキャラと関わりを持ち、家族についても多少明らかになっている。



剣サムのミナのエンディングによると、彼女の亡き父は

その一族という老婆によれば”正義感が強く、思いやりがあって、ずっと他人の為に尽くす、損な生き方に誇りを持っていた”という。

この時ミナの名を知った老婆は、”「ミナ」って言うのはね、ワシらの言葉で「笑う」って意味なんじゃよ。”と告げる。

「ミナ」が「笑う」という意味になるのはアイヌ語であり、よってミナの亡父はアイヌと推測される。

これは零スタッフが語った、”ミナとナコルルには血のつながりがあった”という没設定の名残ではないだろうか。

またミナが”男性不信”(好みのタイプの項)になったのは、

亡父が最後まで母を愛し、子供(ミナ)を気にかけていた事を知らず

母と自分を捨てて去ったと思い、その後憎み続けていたためと推測される。

一方母親については設定で(家族という表現)疎遠になったとだけあり、存命なのか死亡したのかは不明。

故郷はチャンプルに滅ぼされているが母に関する言及はまったくないので、故郷の村にはいないのだろうか?



ミナは妖滅師として、剣サムでは妖怪腐れ外道・羅刹丸・炎邪・水邪・天草四郎時貞に対し勇ましい台詞を投げかけているが、

ストーリーモードではいろはと外道が中ボスとなり、ミナ自身は首斬り破沙羅・不知火幻庵・いろは・レラの中ボスとなっている。

それ以外のキャラには、CPU登場台詞・勝利台詞共に突き放した物言いしかしないが(参照 

あやかしに近いが人間に危害を加える存在ではないいろはとレラに対しては

アドバイスに近い言葉をかけたり同情している風にも取れる態度を見せ、

不知火幻庵の四回戦の相手となった時は、魔物サイドのキャラの中で彼にのみ

「すぐに鬼哭島(幻庵の出身地)に帰って。」と警告している。

推測するに、幻庵だけが家族を持つ身だからではないだろうか。

幻庵の勝利ポーズには、真サムから流用された着物の中から二人の子供・むくろとざくろが登場する……があるので、

子供連れで行動してる扱いになっており、それをミナが目撃したという可能性はある。

妖怪腐れ外道と御前試合で対峙した時も、その業について言及し、役目を果たしている点から見て

ミナはその父の”思いやりがあって他人のために尽くす”(少なくとも、他人の事情を考慮してそれなりに対処する)性質をきちんと受け継いでいる、

と判断できるだろう。

また千両狂死郎のエンディングでは、ナコルルたちと共に狂死郎一座に参加している。




ミナは果たして零で死亡したのだろうか?

零に続いてリリースされた剣サムは、プロデューサーの発言ではお祭り的なパラレルワールドとされているが、

柳生十兵衛のオープニングストーリーでは、

舞台となる御前試合は将軍となる事が決まった徳川家斉(零の設定上では徳川慶寅の義弟)の”御前”で行われる事が明かされており、

史実上の家斉の将軍宣下の時期と照らし合わせると、この御前試合が零の翌年に行われた、という可能性が浮上する。(参照)

しかし剣サムの各キャラエンディングは、そのまま実現すると零以降(『サムライスピリッツ』(初代)~『アスラ斬魔伝』まで)のストーリーが成立しなくなるものも多く

それらがパラレルワールドのストーリーなのは間違いないのだが、

零の続編として見た場合、実はすんなりと繋がっているキャラクターも数人存在し、

筆者(管理人)はミナもその数キャラに入るのではないか?と考えている。



というのも、零の衝撃的なラストシーンはミナの死(またはチャンプルの死)をただ匂わせているだけで、”直接描いてはいない”からだ。

サムスピでは、かつて第三作『斬紅郎無双剣』で千両狂死郎の(死亡を匂わす)エンディングが

第四作『天草降臨』でなかったことになった前例があり、

零以降も『アスラ斬魔伝』での橘右京・牙神幻十郎の(死亡)エンディングが『サムライスピリッツ閃』でなかったことになったが、

これらと違い、ミナのエンディングはテキストでの死亡を匂わす言及もなければ直接の死亡描写もない。

やろうと思えば「死んでいません」と一応言い抜けできなくはない程度である。

ではミナが零のエンディングで死亡を免れたと仮定して、

”パラレルワールドではない(剣サムの)ミナのストーリー”はどうなるのかを見ていこう。



零のエンディングでミナは(チャンプルが凶暴化する直前)こう独白している。

「私……何してるんだろ……? 村を襲ったあやかしを探しにきて……。

戦って戦って……傷ついて、傷つけて……もう、嫌……。

チャンプル、仇討ちなんて……もう、あきらめ――」

つまり戦いに心底嫌気が指し、故郷の仇討ちすら放棄しようとしていたのだ。

元々ミナにとっては”良い思い出はない”故郷なので、

それよりは長年の友達・唯一の心の支えであるチャンプルを選ぶ可能性は大いにある。

(同時に妖滅師としての役割もミナにとっての支えなので、故郷を滅ぼした=人間に害をなしたチャンプルを見逃すのか?という点も大いに疑問だが)

この後チャンプルと和解をしたとして(その場合、チャンプルは元の姿に戻り二度と人を襲わないと誓い

ミナもそれを認めた、といった和解の描写がストーリー的には不可欠になるが)

剣サムのオープニングストーリーでは、琉球に戻ったミナはチャンプルを伴い妖滅師の務めを果たす生活に戻る。

零を引き継ぐと、故郷はチャンプルに滅ぼされているのでミナに帰る場所はなく、

ある村で住居を世話してもらい、良好な関係(村人は妖滅師を恐れ敬い、

人と関わりたくないミナは無関心を貫くという形で)を築いている(剣オープニングストーリー注釈※2)

この時、邪気を感じたチャンプルは”珍しく唸り声を漏らしていた”と書かれている。

零には一度もなかった描写なので、二度の凶暴化を経てチャンプルに起こった変化、と考える事もできる。

そして御前試合に集おうとする魔性の者たちを妖滅すべく、ミナは御前試合への参加を決意した。

そこで出会った鶴の化身のいろはを諭し(しかし話を聞いていないのにキレて去り)、

御前試合では”肉親まで手にかけた”妖怪腐れ外道を妖滅する。

(剣サムのミナのストーリーがパラレルではなく続編、という仮説に立てば、これで外道は死亡し初代までの時間軸に存在しなくなり、手にかけた肉親は娘の儚で確定となる)

エンディングでミナはそれまで憎んでいた父の真実と自分の名の意味を知り、

父に与えられた名の通りに笑えるようになろうと決意するのである。



零の設定画の段階で、ミナの表情集には”エンディング時の笑顔”との注意書き付きの、微笑んでいるカットがある。(参照)

そこからすると、零のエンディングは当初剣サムの形で考えられていた、という可能性はある。

もし、剣サムのミナのエンディングが零のその後を描いているのなら

彼女が子供時代に忘れていった笑顔を、これからの人生で取り戻してくれる事を願いたいものである。




真鏡名ミナはスタッフ自身”和風ビキニ”と称する露出の激しいスタイルで登場し、

「対人恐怖症で引きこもり」という、一般的には人に好かれにくいキャラクターだが

結果的にサムスピを支持する層には受け入れられた。

それは彼女が、妖滅師としての使命にどこまでも真摯であり

わかりにくいながらも、実はきちんと人を思いやる事のできる心の持ち主だったからかもしれない。



ミナが剣サムの妖滅の旅の途中で、あやかしでも人に危害を加えない者(いろは、レラ)や家族のある者(不知火幻庵)には理解を示しながらも

それ以外のキャラクターには(零の勝利台詞に比較して)ひたすら拒絶を示すようになったのは、

彼女が戦いそのものを厭うようになり(いろはとの対峙では「戦いなんて、面倒くさいのに……」と口にしている)

結果戦う者たち(御前試合の参加者たち)にも嫌悪感を抱くようになったからではないだろうか。




    

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