サムライスピリッツ零・公式ストーリー
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徳川慶寅 真鏡名ミナ 雲飛 妖怪腐れ外道
徳川慶寅
〜物語〜
鬼神と謳われた十字槍を振るう武将の話は、慶寅も聞いたことがあった。豪腕にて豪槍。
参戦した戦においては必ず手柄を上げ、負け戦も勝ち戦へと導き、さる地の領主となるまでに身を立てた。
数年前、江戸を訪れたその武将の圧倒的な迫力に、慶寅は初めて武者震いした。
自分から手合わせを望んだのは初めてのこと。何より、その武将は國を愛していた。
慶寅は男に”惚れる”というその意味を知った。
その日、慶寅は一人だった。6人の恋人たちが待つ遊郭で過ごすでもなく、下町で気心の知れた
江戸の民と過ごすでもなく。”兇國日輪守 我旺に叛意の疑いあり”―――そんな風聞が慶寅のもとに届いた。
「……粋じゃねぇなァ」 慶寅はふらりと街を出た。いつもの遊郭に足を運ぶのと変わらぬ様子で。
〜設定〜
将軍家の跡取りだが、将軍家の慣わしが性に合わず、下町で遊び歩いている。
将軍家のことを鼻にかけることもなく、「粋」な性格で人情深いため、町民から人気が有り、女性に慕われる。
1本の太刀と6本の刀を身につけている。6本の刀にはそれぞれに花の名前が付いており、
同じ名前の6人の恋人がいる。
〜物語〜
手遅れだった。何もかもが遅かった。廃墟と化した生まれ故郷を、ミナは感情の無い瞳で見詰めていた。
近隣の集落へのあやかしの討伐に出掛けていた、ほんの数日の留守。
故郷の村から強過ぎる邪気を察し、ミナは帰途を急いだが──手遅れだった。
「……ミナー、ミナー……」
ミナは自分を呼ぶその声に向かって走り出す。
瓦礫の合間を、たった一人の友達、シーサーのチャンプルが彷徨っていた。
チャンプルを抱き上げ、ミナは自分が一人ぼっちでないことに涙した。
良い思い出は無い。幼くして家族とは疎遠となり、友も無く、人々に疎んじられ──
それでも、生まれ故郷はたった一つ。
その身を妖滅師として以来、初めてミナは自らの意思で弓を引くことを決意した。
「……許さない」
強い邪気が流れてくる。
それは、日輪國の方角から。
〜設定〜
生まれつき霊力が高く、琉球王国の神女(カミンチュ)になるべく育てられた。
しかしその強過ぎる霊力ゆえに人々から疎んじられ、ミナは徐々に笑顔を忘れていった。
唯一の友達──むしろ家族、といえるのは、物心付いたころから行動をともにするシーサーのチャンプル。
神女としての才を開花させたミナは、若くして妖滅師となり、邪なるあやかしの討伐を生業とする。
雲飛(ユンフェイ)
〜物語〜
それは闇の中。
身動きひとつできない。身体は眠っている。しかし、その意識は眠らない――― 否、眠れない。
それは自らの過ち。自らの戒め。
数えて千年。意識は眠らずに、己の過ちを問い続けた。
その雲飛が目覚める。近隣の人々から祀られている巨岩が、内側から砕け、雲飛が目覚める。
雲飛の視線は、遥か東の果てを見る。
「忘れもせんぞ、この黒い気配……久しいわい」
最初はゆっくりと、そして、急激な速度で雲飛は空を切り裂き東の空へと飛び立つ。
「倭国に憑いたか。……あやつを消さねば、ワシの罪は償えぬ。いざ、死出の戦に我逝かん!」
〜設定〜
清国(当時の中国)から来た武侠。
千年以上昔、心を魔に取り付かれ魔人と化した雲飛は、中国全土を恐怖へと陥れた過去を持つ。
雲飛の弟子の手によってその力は封印されたが、過ちを償うため自ら眠りにつき、千年の時を超え目覚めた。
武侠にとって信義は法よりも厚く、恩をうければ必ず報いる。老いてもなお、流れるような動きは健在。
妖怪・腐れ外道
〜物語〜
飢餓がもたらした惨苦。それはあまりに根深かった。
もともとは小さな農村だった。農作物は壊滅し、蓄えも尽き、水は枯れた。
此処は何処かと問われれば、六道における餓鬼界と答えたところで疑い様はなかった。
食物を口にしなくなって、果たしてどれほどの時を過ごしたのか。腹は餓鬼の如く膨らんでしまった。
喉は辛うじて息をする程度の役割しか果たせなくなっていた。
何かを食べたかった。食べられそうなものが目の前にあるのに―――。
混濁した意識の中、葛藤は決して終わることはなかった。
しかし、最初の一口から後は、それまでの煩悶が嘘のように心から消えた。喉が潤う。顎が動く。歯で噛む。
空気以外のものが喉を通る悦び。ひたすらに貪り食った。これ以上のご馳走は記憶に無い。
食えそうな部分をひとしきり食い終わると、正気に戻った。
冷静に、自分が何を食ったのか、正しく理解した。だが、罪の意識などなかった。
「お、おめえ、何……何を食っとんだ?」
息も絶え絶えな声が諌めてくる。
「子供……食ってんのか? それだけはやっちゃなんねえだろうが! この……腐れ外道が!」
声は出せなかった。呑み尽くした腕が喉に絡み付いてしまったために。だから、表情で応えた。歪んだ笑顔で。
いただきまぁす―――と。
〜設定〜
飢餓のあまり、人の子を食すという禁忌を犯し、人として堕ちるところまで堕ち、その果てに行き着いた者が、
人を喰らう妖怪と成った。
その思考は貪欲に支配されており、常に獲物を探している。いつも腹を減らしており、人を喰らい続けるが、
決してその食欲が満たされることはない。
好物は勿論、人の子。部位は大腿内側。
◆徳川慶寅 開発コメント
既に元主人公キャラが三人もいましたので、これまでとは違うタイプにすることに気を付けました。
風来坊の覇王丸に対しエリートコースの慶寅、という対比を軸にして、苗字がついてからは、
キャラがどんどん一人歩きしていきました。着物が黄色いので、開発中「カレー」と呼ばれていました。
◆真鏡名ミナ 開発コメント
最も難しかったキャラクターで、デザイン、設定共にギリギリまで悩みました。
必殺技名などは、ボイス撮り当日に、行きの電車の中で考えました。
新キャラで唯一の女性キャラということで、ウケを狙わなければいけないのですが、
「対人恐怖症で引きこもり」という、到底ウケそうにはない設定にしてしまったため、実際に世に出してみるまではかなり不安でしたね。
◆雲飛 開発コメント
中国市場を狙ったキャラが欲しいとのことで、武侠映画を参考にキャラをつくりました。
マニアックなキャラクターにするのがコンセプトで、当初は構えを変えると技の派生が変わるという、
地上戦のキャラでした。基本形が直立なのはその時の名残です。
必殺技は「常にワイヤーで吊られている」というコンセプトで作ったのですが、うっすらとワイヤー線が見えるでしょうか?
◆妖怪腐れ外道 開発コメント
実際に画面に出してみたときのインパクトがすごかったので、ハードの制約も無視して、
とにかく見切り発車で絵を描き始めました。下品なキャラなので、これまでのユーザーが離れてしまう
恐れがあったのですが「それ以上のユーザーを呼び込める!」と、無理を押し通しました。
蓋を開けてみると、ロケテストアンケートでは、ぶっちぎりのキャラ人気一番でしたね。
このキャラクターのデザインには、和月氏とは別の、『侍魂』に関わりの深い漫画家さんに協力してもらったのですが、
彼の協力なしにはこのインパクトは生まれて来なかったですね。