九葵蒼志狼
オープニング
二人目
ナコルルの登場
七人目
八人目
ナコルルの導き(朧衆戦前)
ナコルルの導き(朧衆戦後)
ボス戦(十四人目)
エンディング
幕府将軍家から御庭番衆へ密命が下った。離天京という幕府が直轄していた収容施設の調査。
その黒幕『覇業三刃衆』による国家転覆計画。
三刃衆……其の中に白い肌をした秘剣を操る男『九鬼』。
一子相伝であるその秘剣、師であり、己が実父を殺害した義兄も『九葵刀馬』と云った。
秘伝の書、『冽水と烈水交わりし時、日は昇りて流水、天に昇らん』。今でも、書の投げ掛ける真意は分からない。
義兄だったアイツは知っているのか。つまらぬ過去を思い出した己に苦笑する蒼志狼。密命に従い斬るだけの事。
「…………いざ、参る」
涼しげな瞳をした天才剣士が、宿命を逆登るように離天京へ向かう。
夜血「なあ、アンタ、幕府の犬だろ?」
蒼志狼「……」
夜血「隠すなよ、分かってるんだからさぁ。なぁ、オレと組みなよ」
蒼志狼「……」
夜血「おいっ!! 聞いてんのかよ」
蒼志狼「……邪魔だ、どけ」
夜血「えっ?! なに言ってんの?」
蒼志狼「……消えろ……」
夜血「あんたさぁ!! もおいいよっ、死ねっ!!」
ナコルル「お願い……。助けて、暗黒の闇が……。黒い力が……。破壊が……来るの……。
どうか……。あなたの……力で……。邪悪な力を……止めて……下さい。覇業三刃衆を……」
凜花「待ちなっ!! あんたよそ者だろ」
蒼志狼「……」
凜花「ここはあんたみたいなヤツが来る所じゃないんだよっ! 出ていきなっ!!」
蒼志狼「そこをどいてくれ」
凜花「ここは侍なんかが来れる所じゃないんだよ!!」
蒼志狼「……」
凜花「何ブツブツ言ってんのさっ! 聞こえないよ!!」
蒼志狼「騒ぐな、チビ」
凜花「なっ! 何だって!!」
蒼志狼「……またか……」
銃士浪「悪いな若いの。オレも不本意だが、さっきのアレは、一応知り合いなんでね」
蒼志狼「……」
銃士浪「……んっ!! ……オマエ、どっかで?」
蒼志狼「逃げ出しても、刀は捨てられなかったようだな」
銃士浪「!!!! そうか、あん時のチビか!」
蒼志狼「無駄口は、終わりだ」
銃士浪「はっはっは、相変わらずかわいげがねえガキだぜ」
蒼志狼「悪いが斬らせてもらうぞ」
銃士浪「悪いなら、斬るなよ」
ナコルル「私の話を聞いて。私の名はナコルル。光の巫女。あなたにお願いがあるの。
今、あなたの目指している人は、恐ろしい人達の仲間。その人達の名前は、覇業三刃衆。
邪悪な意志を継ぐ恐ろしい人達……。二十年前……。邪悪な意志の元となった人物が現れたの。名前は朧。
その人物は、今の世の中を混乱させて、強い者だけが生き残る国を創ろうとしているわ。
その時に朧は、邪魔になる私たち光の巫女を恐れて封印したの。お願い。私はもうこれ以上うごけないから。
でも、もう一人の光の巫女。彼女ならきっとあなたの助けになるはずよ。彼女はこの先で永い眠りについているわ。
お願い、あの娘を助けてあげて。名前はリムルル。私の妹なの」
朧衆「光の巫女を助けに来ただと。己ごときの力量で我々を倒しに来たとは笑止!返り討ちにしてくれるわ。覚悟!」
「ありがとう。もうすぐこのリムルルも目を覚ますわ。貴方が傷つき、先の道へ進めなくなった時、リムルルがあなたの助けになると思うの。
ありがとう……。どうか……邪悪な意志を……滅ぼして……」
刀馬「待っていたぞ、蒼志狼」
蒼志狼「……」
刀馬「まさか我が流派の証がもう一刀あるとはな」
蒼志狼「オヤジは何も言わなかったのか」
刀馬「オレの誤算だった。言う前に斬り捨ててしまったようだ」
蒼志狼「刀馬っ!!」
刀馬「蒼志狼……オレが憎いか?」
蒼志狼「勘違いするな、オマエの流派じゃない。オレの流派だ」
刀馬「……変わらぬな、オマエは。ならば、昇れるか蒼志狼! オレより高い次元に!!」
蒼志狼「オマエはオレの場所じゃない」
刀馬「くっ……まだだ。まだ終わらんぞ、蒼志狼!」
(刀馬を庇うように命が縋り付く)
命「お待ち下さい、蒼志狼様!」
蒼志狼「……」
命「お願いです、この方を……刀馬様をこれ以上傷つけないで下さい……」
刀馬「命……」
命「この方の心は……あまりにも傷を負いすぎているのです。私には……それが分かるのです」
蒼志狼「……」
刀馬「どけ、命……」
命「お願いです……このままではあなたの心が、あなた自身に押し潰されてしまう……」
刀馬「命よ!! この場所にオマエが存在する場所はない」
(命を押しのけ紅煌を手に蒼志狼に迫る刀馬)
命「……と、刀馬様……」
刀馬「今、この場所に何人たりとも存在する事認めぬ!!」
蒼志狼「刀馬……オマエはオレには勝てん……。それが真理だ」
刀馬「咆哮(ほえる)な、蒼志狼!!」
蒼志狼[オマエの目線は、オレを見ている」
刀馬「目線……だと?」
蒼志狼「オレが見ている場所はあの天の頂のみ」
刀馬「オレは……オマエを超えられないだと……。増長するな、蒼志狼!!」
蒼志狼「……オヤジも……そう言ったはずだ」
刀馬「何だと……そうか、あの時……。良かろう。ならば親子共々、黄泉の地へいざなってやる」
(紅煌を構える刀馬)
刀馬「……我が領域は零だ!! 万物いかなる存在も、踏み込む事能わず(あたわず)」
(蒼煌を構える蒼志狼)
蒼志狼「オレが目指す頂は無限に広がる宇宙。森羅万象、万物の総てを司る」
(打ち合う二人)
刀馬「セイヤーッ!!」
蒼志狼「セイッ!!」
『ガキン!!』
流水流れ着く所……冽水と烈水交わりし時、日は昇りて、流水天に昇らん……。
(倒れた刀馬を命が助け起こしている。側に立つ蒼志狼)
蒼志狼「刀馬……。その凍てついた氷河を溶かす暖かい日差しに、自ら気づいた時、オマエの大河は流れ出すだろう。
……。
……忘れていた……」
蒼志狼「……刀馬。オレの刀は返してもらうぞ。それから、ものはついでだ……。これは、オヤジの痛みだ」
(刀馬の顔面に蹴りを入れる蒼志狼)
『ガスッ!!』