十六薙夜血
オープニング
四人目
六人目
九人目
ナコルルの導き(対朧衆団体戦前)
ナコルルの導き(対朧衆団体戦後)
ボス戦
エンディング
離天京にある色町『是衒街』。その裏路地で二人の男が罵倒しあっている。
「お前は恐ろしい男だ。そんな得体の知れぬ計画で、よくも今まで俺たちを!」
「得体の知れない? なんの事言ってんだよ、オマエさぁ……」
「とぼけるな! 裏で朧衆とつながって何をするつもりだ! 奴ら三刃衆なんかとつるんだら命がいくらあっても足んねぇ。
やるならキサマ一人でやれ!」
そう罵倒した男の腹を、もう一人の男が、その手に持つ光物で、一瞬でエグって引き抜いた。
「オマエが嗅ぎ回りすぎるからこうなんだよ……。もう生まれてくんな……」
ゆっくりゆっくりとノコギリ刃を引き抜く。血の海に男の骸が一つ転がる。
ノコギリ刃の血をはらい、男は夜の歓楽街へと消えていく。
この男、名を十六薙夜血といい、色町中心に自警をする侠客集団の表頭である。いつも夜血が帰る場所は、是衒街の郭でも評判一である
『那美乃』という太夫のもとである。
郭の部屋に上がるなり、全裸になって布団へともぐりこむ夜血。脱ぎ散らかした衣類を一つずつ丁寧に、那美乃がたたんでいく。
ふいと着衣の袖が湿っている事に気づく。
「ねぇ、夜血……危ないことは、あまりしないでね」
那美乃の手に、そっと触れながら夜血が云う。
「あぁ、何云ってんだよ、心配すんな……。オレちょっと休むわ」
そう寝返りをうった夜血の瞳の奥では、三刃衆への殺意と快楽がみなぎっていた。
夜血「なあ、アンタ、幕府の犬だろ?」
蒼志狼「……」
夜血「隠すなよ、分かってるんだからさぁ。なぁ、オレと組みなよ」
蒼志狼「……」
夜血「おいっ!! 聞いてんのかよ」
蒼志狼「……邪魔だ、どけ」
夜血「えっ?! なに言ってんの?」
蒼志狼「……消えろ……」
夜血「あんたさぁ!! もおいいよっ、死ねっ!!」
伊賀忍軍A「御屋形様が何者かの手によって傷を負われたぞ」
伊賀忍軍B「何っ!! 一体何者だ。あの御屋形様に傷を負わすとは」
伊賀忍軍C「よほどの手錬れ……」
伊賀忍軍B「ん、誰か来るぞ!!」
伊賀忍軍A「何奴(なにやつ)?!」
夜血「おっと、そんなに構えるなよ。怪しい者じゃないぜ」
伊賀忍軍A「それは我々が決める事だ!」
夜血「……。クックック。なかなか厳しい事言うじゃん、アンタ」
伊賀忍軍A「無駄口はよいわ。用件をいえ」
夜血「アンタら、三刃衆追ってんだろ」
伊賀忍軍A「何っ!! なぜその事を?!」
夜血「奴等のアジト知ってんだ、オレ」
伊賀忍軍A「真か、その話!! ならば申せ、命だけは助けてやる」
夜血「ちょっと待ちなよ。それは、ね〜んじゃないの。オレはさぁ、金がいるんだよ」
伊賀忍軍A「フン!! 金か。まるで闇にまぎれ血を吸うコウモリだな」
夜血「コウモリだと……」
伊賀忍軍B「オッ、オイ!! こいつの背中!!」
伊賀忍軍C「たしか御屋形様を闇討ちした者の背にドクロが!!」
伊賀忍軍A「何っ!! 貴様っ!!」
夜血「這いずり回る犬のくせに、オレをコウモリだと? …………。
好きなだけ嗅ぎ回れよ。全員並べといてやるからさ、その首」
眠兎「チィース」
夜血「チッ!! 何でこんな所にいるんだよ、小鬼が」
眠兎「ヒシシシッ!! んとね、ミントが見つけたのね」
夜血「なに言ってんだか分かんないんだよ、オマエ」
眠兎「眠兎的秘密基地ッス! 知ってた?」
夜血「……知らね〜よ……」
眠兎「ふ〜ん、知らんかったんか」
夜血「オマエさぁ、訳が分かんないんだよ、いつも。んっ!! そ〜いや、もう一匹は?」
眠兎「知らん。でも大丈夫なのね」
夜血「心配してね〜よ、誰も」
眠兎「んとねっ、女ってボインなのにナミノはボインくないの。ミント見たぞっ!! ぷにぷにしとらんかった」
夜血「!! 何だと!! ガキ、誰にもいってないだろうな?!」
眠兎「ミントの歌聞きたい?」
夜血「何いってんだよ、オマエ」
眠兎「ナミノーのボインは、ぺっちゃぺちゃ!!♪ ミントーは、いつかプニップニ!!♪」
夜血「何、いきなり歌ってんだよ!! 黙れっ!!」
眠兎「ミントはでかくなったらプニプニするってオジイがいってた」
夜血「気に障るんだよ、オマエら。もういいよ、死んでくれ」
ナコルル「私の話を聞いて。私の名はナコルル。光の巫女。あなたにお願いがあるの。
そんな顔しないで。大事なことなんです。
今、大変な事が起こっているの。邪悪な意志を引き継ぐ覇業三刃衆によって……。
20年前……。邪悪な意志の元となった人物が現れたの。名前は朧。
その人物は、今の世の中を混乱させて、強い者だけが生き残る国を創ろうとしているわ。
その時に朧は、邪魔になる私たち光の巫女を恐れて封印したの。お願い。私はもうこれ以上うごけないから。
でも、もう一人の光の巫女。彼女ならきっとあなたの助けになるはずよ。彼女はこの先で永い眠りについているわ。
お願い、あの娘を助けてあげて。名前はリムルル。私の妹なの」
朧衆「光の巫女を助けに来ただと。己ごときの力量で我々を倒しに来たとは笑止!返り討ちにしてくれるわ。覚悟!」
ナコルル「ありがとう。もうすぐこのリムルルも目を覚ますわ。貴方が傷つき、先の道へ進めなくなった時、リムルルがあなたの助けになると思うの。
ありがとう……。どうか……邪悪な意志を……滅ぼして……」
命「下賤のコウモリがワラワに何の用じゃ?」
夜血「チッ!! その人を見透かした態度、いちいち気に障るんだよ、オマエ」
命「ホッホッホ。ワラワに向かって、よう鳴きよるわぇ。下衆の分際で」
夜血「このアマッ!! その顔ズタズタにしてやるよ」
命「その薄汚く醜いオマエが、ワラワに楯突こうというのかえ」
夜血「邪魔なんだよ。アンタさえいなけりゃ、オレが三刃衆になれんじゃん」
命「ホッホッホ、ぬかしよるわえ、こやつ。お主のような小賢しい虫ケラが、あの方の手足になろうとは片腹痛いわ。
世迷い言もたいがいにしやれっ!!」
夜血「あの方? ……クスッ。アンタ……あの九鬼とかいうダンナに惚れてんのか?」
命「なっ……何をいいやる!! ワラワがそんな事……」
夜血「ハッハッハ、イイツラしてるよ、アンタ。死んでもそのツラぶら下げてられるかい!!」
夜血「……どこだ、ナミ!! ……ナミ!!」
那美乃「夜血!!」
(是衒街の通りで抱き合う二人)
夜血「ナミ……大丈夫か? 何も無かったか?」
那美乃「……夜血」
夜血「どうした、ナミ!! オマエ震えてるのか?」
那美乃「……大丈夫。……ゴメンネ。少し恐かっただけ」
夜血「いいんだ。ナミ、いいんだ。オマエが無事なら……。行こう、明るくなる前に、……この街から出よう。
……どうした、ナミ?」
那美乃「……少しだけ……。もう少しだけ、このままでいて。……この震えが止まるまででいいの……」
(見つめ合う那美乃と夜血)
那美乃「…………」
夜血「……那美乃……オレは永遠にオマエを離さねえ。たとえ、オマエにこの身を八つ裂きにされようとも、
この肉体が、朽ち果てたとしても……オマエからは絶対に離れない」
那美乃「……あなたが望むなら、私はそれだけで幸せ」
夜血「……クッ。クックッ、オマエさあ、そんなに泣くなよ……」
那美乃「……うん……ゴメンネ……グスン」
夜血「また謝るぅ……。ナミさぁ……その癖だけは直んねぇよなぁ。他の男には使うなよ。オレさぁ、結構気に入ってんだよ」
那美乃「…………」
夜血「……ウソだよ、今のは冗談だよぅ」
那美乃「……!!!!」
仲間(屍媚党のメンバー)「イザナギイィィ!!」
『ドンッ!!』
夜血「!!!!!!!! …………」
那美乃「!!!!!!!!!! ……夜……夜血……」
(背に短刀が突き刺さり血を流している那美乃を抱きかかえる夜血。その前に腰を抜かしている仲間)
夜血「………………………………。……なんだよ?」
仲間「オ……オッ……オマエが悪いんだ。全部……オマエが招いた事だ!!」
夜血「なに言ってんだよ、オメエよ……。……分かんねぇ〜よ。なんなんだよ……」
仲間「ヒッ……ヒイィ……ヒィィィィィッ!!」
(ぐったりした那美乃を抱きかかえながら、得物を振り上げ仲間を滅多打ちにする夜血。血潮が飛び散る)
夜血「なんなんだよオメエはよ、何してんだよ……分かんねぇんだよ」
『ブゥン!!』
『ゴツッ!!』
『ゴリュッ!!』
仲間「イ゛ヒィィィィッ!!」
夜血「何言ってんだよ、オメエはよ!! なんなんだよ……言えよ」
『ズリュッ!!』
『ザクッ!!』
『ブシュッ!!』
『ギュリッ!!』
夜血「なんだよ……なんなんだよ……ナミ、おいナミ!! ……ちゃんと立てよ!!
……大丈夫だよ……。……船……船見つけたんだぜ。オイ!! 聞けよ……」
仲間「ゴゥ……ゴヒッ……い……行けや、夜血。ゴボッ……ゴホッ……行けば気づくだろうよ。
オメエが……この街に生かされてた事を……オレタチに、この世を渡る羽がない事に……」
(海岸に着けられた小船に那美乃を横たえる夜血)
夜血「濡れるぜナミ、こっちだ……なんだよこの船、揺れんなよ」
那美乃「……夜血……」
夜血「しっかりつかまれよ、落ちんだろうがよ」
那美乃「……夜血……ゴメンネ」
夜血「早くよ、早く行かねえと朝が来ちまうじゃねぇ〜か。おいナミ、なんなんだよ何で血が出てんだよ。
止まんねぇ〜じゃねぇかよ……止まれよ!! 流れんじゃねぇ〜よ」
那美乃「……ゴメンネ……」
夜血「なに謝ってんだよ、謝んじゃねぇ〜よ」
那美乃「……ネェ、聞いて……」
夜血「なんなんだよ、これはよ!!」
(夜血を見つめる那美乃、手を握っている夜血)
那美乃「ネェ……夜血? 私の話を聞いて。あなたはとても優しい人」
夜血「なんなんだよ……この船……」
那美乃「だって……私なんかに優しくしてくれたもの。ただ、気持ちに正直なだけ……」
夜血「なに言ってんだよ、分かんねぇよう」
那美乃「こんな私を愛してくれて……アリガトウ。次に生まれてくる時は……、……女として生まれてくるからね……」
(沖へと進む小船の上で、事切れた那美乃を抱き締める夜血)
夜血「ちょっ……ちょっと待てよぅ……。なに寝てんだよ。目、開けろよ。なんなんだよ……。おい、ナミ!!
ちょっと待てよぅ……置いてくなよ……。一人にしないでくれよぅ、なんだよこの船……沈んでんじゃねえ〜かよ。
ナミ? ……ナミ!! ……笑えよ……笑ってくれよぅ……一人にすんなよぅ……恐え〜じゃねぇかよぅ」
オープニングの夜血の仲間殺害に関係していると思われる(九皇蒼志狼のストーリーモード参照)。
『甦りし蒼紅の刃公式ガイドブック』P139の屍媚党の設定資料では、夜血に殺されたのは後釜を狙っていた男紫電(シデン)。(女好きでお調子者という)
彼には炎蔵(エンゾ)という(仁義に熱い極道者の)兄がおり、設定では弟の敵討ちをしようとして那美乃を殺し夜血に殺されるとある。
ゲーム中エンディングで夜血に殺される「仲間」はデザイン的に炎蔵ではないが、
この件は、漫画版『甦りし蒼紅の刃』全2巻のラストシーンではきちんと再現されている。