首斬り破沙羅 物語りまとめ
首斬り破沙羅の時系列
※初登場作はこの色
※続投作品はこの色
無色は出場していない作品
歴代公式プロフィール
リリース順 | 作品全体の物語 |
サムライスピリッツ(初代) | 暗黒神アンブロジァによって復活した天草四郎時貞の怨霊が引き起こした異変を鎮めるべく、十二人の剣士が島原へ向かう。 |
真サムライスピリッツ | アンブロジァに仕える魔界の巫女・羅将神ミヅキが甦った。十五人の剣士たちが、ミヅキの本拠地恐山へと向かう。 |
斬紅郎無双剣 | 「鬼」と呼ばれる無情にして強力の剣士・壬生月斬紅郎を斃すため、十二人の剣士が立ち上がる。 |
天草降臨 | 天草四郎時貞が光(善)と闇(悪)に分裂し、闇の天草は島原に魔城を建立。十七人の剣士たちが島原へと向かう。 |
侍魂(64) | 人形師に身をやつす魔界のもの・壊帝ユガが復活。十一人の剣士たちがユガの元へと向かう。 |
アスラ斬魔伝 | ユガの敵対者である魔界のもの・アスラが地上へ現われる。壊帝も再生し、十三人の剣士たちはユガを葬るため立ち上がる。 |
甦りし蒼紅の刃 | 二十年後。江戸近海の小島に存在する「離天京」を支配する覇業三刃衆を倒すべく、様々な立場の剣士たちが三刃衆の居城「天幻城」へと向かう。 |
サムライスピリッツ零 | 初代の二年前。幕府に反旗を翻した武将・兇國日輪守我旺は魔界のもの”闇キ皇”にとり憑かれた。引き起こされる異変を鎮めるべく、二十四人の剣士たちが戦の場・黄泉ヶ原へと向かう。 |
天下一剣客伝 | 本編の時間軸とは関係しないパラレルストーリーであり、エンディングは基本的に登場キャラクターの望みを叶えたものとなっている。 枠組みとしては、零の主人公徳川慶寅が主催する御前試合に四十一人の剣客たちが集うとなっている。 |
サムライスピリッツ閃 | アスラ斬魔伝の結末の幾つかを無効にした翌年の出来事。 レスフィーア王国出身の軍人ゴルバが、祖国の再建のため日本は天降藩の鈴姫と前国王の形見のバスタードソードを狙って日本に刺客を差し向ける。ゴルバの陰謀に巻き込まれた剣士たちは彼の居城を目指す。 |
首斬り破沙羅の時系列 (キャラクター別物語) |
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サムライスピリッツ(初代) ≪1788年春≫ |
都を追われた者達の山間の隠れ里で、最も狩りに優れ尊敬を集めていた若者が破沙羅だった。 幼なじみでもある村長の娘・篝火との祝言の夜に村は"鬼"に襲われ壊滅し、破沙羅も篝火諸共命を落とす。 しかし愛する者を奪った"鬼"への恨みと憎しみの強さから、"鬼"を鼓舞していた天草四郎時貞に目を付けられ、破沙羅は屍として甦った。 (斬紅郎無双剣公式小説より) 天草降臨の破沙羅プロフィールでは、破沙羅の命日="鬼"壬無月斬紅郎に殺害された日は1788年4月1日となっている。 |
斬紅郎無双剣 ≪1788年夏〜秋口≫ |
エンディングでは、斬紅郎を斃した後”光が見えない”、つまり視力を失った状態であるらしい破沙羅は側を流れる川の音を頼りに再び歩き出す。 (斬サム公式小説では、天草は破沙羅に対し「見ることかなわず。聞くことかなわず。ただ感じるままに鬼を斬れ!」と呼びかけている) |
天草降臨 ≪1788年秋〜冬≫ |
死を望む破沙羅は、死ぬために自分を甦らせた天草を斃さなければならないと知り、島原の天草城=魔城へと向かう。 エンディングでは破沙羅の前に妻篝火の霊が現われ、「うらみをもったまま死んだ人たちが、貴方にすがっているの。」「お願い、助けてあげて」と告げる。 破沙羅は妻の願いを叶えるべく現世にあろうと決意するが、何者かの手によって封印されてしまう。 |
首斬り破沙羅、二年前に時間逆行(パラレルストーリーへ) | |
サムライスピリッツ零 ≪1786年春先≫ |
廃寺に現れ、"鬼"を斬っても天草を斬っても篝火の所に逝けないと述懐する破沙羅。 彼の前に篝火が現れ、天サムエンディングと同じ台詞を繰り返す。破沙羅は篝火の元へ行くべく歩き出した。 エンディングで篝火に導かれ破沙羅の見た光景。鬼に怯えて狂った破沙羅が篝火を絞殺したことが明らかになる。 混乱する破沙羅に篝火は同じ台詞を繰り返す。その中に「私を助けて」という言葉が加わった。 |
天下一剣客伝 ≪1787年春?≫ |
"遥か昔にすべては終わっていた。それなのに、いまだに終わりは訪れない。" 破沙羅はひたすらに、篝火のもとへ行くことのみを望む。 御前試合に現れた破沙羅を救うことは、妖滅師の真鏡名ミナにも僧侶の花諷院骸羅にも果たせない。 エンディングで破沙羅は再び時間を超越し、(破沙羅にとっては)過去の(実際には近い将来の)自分を斬ろうとしていた斬紅郎の前に現れた。 逃げていく生前の自分へ「篝火を幸せにするんだ」と呟き、斬紅郎と相対し斃した破沙羅は、篝火と共に昇天する。 破沙羅の頬を流れ続けていた血の涙は澄んだ涙へと変じ、死人と霊と化した恋人達にようやく望んでいた終末が訪れた。 |
◆概要
サムライスピリッツシリーズ中、唯一のアンデッド(復活した死人)という異端の存在であり、
タイムスリップで時系列を超越するという、他にない特異な状況に置かれもしたキャラクターが首斬り破沙羅である。
初登場した『斬紅郎無双剣』(以下斬サム)では、自身と妻を殺害した仇である"鬼"壬無月斬紅郎を倒しても成仏できず、
それは続編の『天草降臨』(以下天サム)では破沙羅を直接甦らせた天草を倒さなければ叶わないとなっていた。
しかし彼は、天サムのエンディングでは突然封印されてしまうのである。
その封印の仕方は一部を除いて天草にとられたと同じ方法であり、
天草のエンディングと合わせて考えると、手を下したのは羅将神ミヅキと思われる。
破沙羅の前に現れた妻篝火の霊が言い残したように、
破沙羅が”恨みを持って死んだ者たち”のために動けばミヅキ=アンブロジァ側の邪魔になると判断されたからだろうか?
故に破沙羅は『真サムライスピリッツ』以降の時系列で完全に姿を消し、辻褄こそ合っているものの
ストーリーとしては消化不良気味な"投げっ放しエンド"の形になってしまった。
『サムライスピリッツ完全ガイドブック』では、「(天サムの)エンディングで封印されてしまった首斬り破沙羅は次作で復活するのでしょうか?」との問いに
「安らかに眠らせてあげてください」とあり、破沙羅のストーリーはこれで終了を言い渡された形になった。(P102)
しかしその後、SNKプレイモアがリリースし悠紀エンタープライズ(当時)が製作した2D格闘ゲームとしての新作『サムライスピリッツ零』(以下零)では
"シナリオ上絶対存在しないキャラ"である破沙羅は辻褄合わせとして"タイムスリップという荒業"で登場する事となったのだが……。(参考)
◆零と天下一剣客伝での首斬り破沙羅の項目を参照の事。
◆関連キャラクター
妻の篝火と、舅になるはずだった村長(篝火の父。公式小説より)。
破沙羅と篝火、そして村人たちを殺害した仇である壬無月斬紅郎。
天サムのライバルキャラとしては花諷院骸羅が登場し(骸羅のライバルキャラは破沙羅になる)、
破沙羅を成仏させようと腐心しているようである
(ただし、骸羅は自身のエンディングでは斬紅郎を優先して破沙羅を忘れ去っていた)。
零のCPU戦で首斬り破沙羅には、骸羅に対し「成仏させてくれ……。篝火のところに逝きたいんだ……。」という台詞があるが、
零の年代は斬サムの約二年前なので、この時骸羅は破沙羅の存在を知らないはずである。
さて彼はどう思ったのだろうか。困惑したのだろうか、それともさほど気に留めなかったのか。
天下一剣客伝(以下剣サム)の中ボスは、骸羅と妖滅師の真鏡名ミナであり、
ミナはこれまで見たこともない破沙羅の特異性に戸惑っている。
破沙羅に対し専用台詞を持つキャラに橘右京がいるが、病気を患う彼が復活した死人である破沙羅に
「顔色が優れないようですが……?」と話しかけるのは皮肉がきいていると言うべきだろうか(笑)
◆零と天下一剣客伝での首斬り破沙羅
零におけるストーリーモードのエンディングの中で最も物議を醸したものが、
リムルルのエンディングにおける”ナコルルとリムルルに血縁関係はない”という描写と
首斬り破沙羅のエンディングにおける”篝火を殺害した犯人は鬼・壬無月斬紅郎ではなく破沙羅本人”の描写だろう。
この二つのエンディングは、旧SNK時代の設定を根底から覆していると言える。
しかしリムルルのエンディングについては、そもそも彼女は存在自体が後付け設定と言えなくもなく
(リムルルの登場は第二作『真サムライスピリッツ』からであり、第一作の初代『サムライスピリッツ』ではまったく言及されていない)
設定上でも物語上でも、血の繋がりのある実の姉妹と明言された事は
(外伝的位置づけの『ナコルル〜あのひとからのおくりもの』を除いて)一度もない、と強弁できなくもないのだが(笑)
一方の破沙羅のエンディングはというと
斬サム時代、公式小説で破沙羅と篝火は祝言の夜眠りこんでいた所を斬紅郎に襲われ、二人諸共斬られたと描写されていたが
零のエンディングでは、悪夢にうなされる破沙羅は心配した篝火を「鬼が来る」と繰り返しながら絞殺する。
両者は明らかに矛盾している。
このストーリー上の矛盾は、突き詰めていけば破沙羅を零のシナリオに組み込むために使われた
”タイムスリップという荒業”に起因しているように思われる。
零のオープニングでは、廃寺にタイムスリップで現れた破沙羅はこう述懐している。
「天草を狩っても……鬼を狩っても……篝火のところに逝けない……。」
この台詞から判断すると、零の時代にやって来た破沙羅は天サムのエンディングを迎えた状態であり、
そのままだと天サムの天草同様(おそらく羅将神ミヅキの手によって)封印されて終わる所が
封印を免れてタイムスリップしてきた、と解釈できないだろうか。
つまりその時点で、破沙羅の運命は封印されてサムスピの舞台から姿を消すのと
時代を逆行し別な結末を迎える、の二種類に分かれた……要は
破沙羅のみ、剣サム以前に零の時点でパラレルワールドに突入していたのではないだろうか。
そして剣サムが零の翌年の続編的要素も持つ事を考え合わせれば、(参照)
破沙羅のSNKプレイモア作品でのストーリーは、零と剣を合わせて初めて完結し、
彼は晴れて望み通り、篝火と天空の死者の世界へと旅立つのである。
そう考えても破沙羅の過去・篝火の死因に関する矛盾は解消しないが、
剣サムの破沙羅エンディングで斬紅郎が"1788年(初代の年代)の時点で破沙羅に斃されている"のは
明らかにその後のストーリーに影響し、斬サムと天サムが成立しなくなるので
破沙羅の零の過去は、タイムスリップした破沙羅が斬紅郎を斃す結末に至る所まで含めて一繋ぎにパラレルワールドになる、
と結論付けることもできるだろう。
個人的には、死人でありながら生者の世界をいつまでも彷徨い続ける定めを負った破沙羅が
自らの運命に決着を付け、愛しい女性と昇天していくラストは評価できる。と思っています。
ところで、零のエンディングは剣サムのエンディングにおいて若干補完されており
生前の破沙羅は鬼・壬無月斬紅郎と遭遇しおそらくはその場で斬られ
家に帰りついたものの恐怖で発狂状態になり篝火を手にかけた(その直後破沙羅も死亡した)、ということになるようである。
(剣サムエンディングでは、生前の破沙羅が斬られる直前首斬り破沙羅が現れ、生前の自分を逃がす)
何故、斬紅郎を倒し天草を倒した破沙羅は成仏できなかったのか。
その謎に対するひとつの解釈が、零の破沙羅エンディングだったのではないだろうか。